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新がんワクチンの意外な素顔

掲載日:2008年10月9日

日経サイエンス11月号 迫り来る水危機
  • 火事で家から火の手が上がると消防車が駆けつけて消火、それから大工さんが来て家を直す。私たちが火傷をしたときにも、それと似たようなことが体内で起きて細胞が修復される。

    そのとき大活躍するのが熱ショックタンパク質だ。高温(熱ショック)が引き金になって、そのタンパク質を作る遺伝子が“目覚め”、細胞内でたくさん生み出される。そして、体内でミクロの大工さんのように働いて、素材となるタンパク質を正しい形に整えたり、そうしたタンパク質を必要な場所まで運んだりする。

    その後の研究で、熱ショックタンパク質は“平時”でも忙しく働いていて、細胞のメンテナンスをしていることがわかってきた。しかも、バクテリアのような単細胞生物から哺乳類のような複雑な生物まで、あらゆる生物の細胞で熱ショックタンパク質が働いていることも明らかになった。このため、生命の誕生とほぼ同時期に登場した、非常に古い歴史を持つタンパク質だと考えられている。

    さらに最近、哺乳類の免疫系でもきわめて重要な役割を果たしていることがわかってきた。免疫は病原菌や、がん細胞などを探して排除するシステム。熱ショックタンパク質は、その攻撃対象、特にがん細胞の特定に深くかかわっていることが明らかになった。

    この性質をうまく使えば、がんに対する免疫力を高めて、がんを治療する道が開ける。熱ショックタンパク質を利用した「がんワクチン」だ。すでに欧米で臨床試験に入っており、ロシアでは2008年春に第一号が認可された。

 

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