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ハーセプチンが変えた乳がん治療

掲載日:2008年9月1日

日経サイエンス10月号 自己組織化する量子宇宙
  • 食生活の欧米化などによって患者数が増えている乳がん。女性の20人に1人はかかるともいわれる。患者数が多いだけに、治療法の研究も活発で、この10年間での長足の進歩を遂げた。特に目覚ましい成果が出ているのが抗がん剤だ。少し前、「タモキシフェン」という新薬が新聞や雑誌で話題になったことを覚えている人がいるかもしれない。すでに乳がんの化学療法の選択肢の1つとして定着している。そして今、普及が進んでいるのは「ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)」だ。

    ハーセプチンは米国で認可されて10年目。日本でも2001年に承認され、今年2月には手術後の化学療法としても保険が使えるようになった。分子標的薬と呼ばれる新タイプの抗がん剤で、乳がん細胞を急激に増殖させるHER2(ハーツー)というタンパク質を集中的に攻撃する。乳がんにはいくつか種類があり、中でもHER2を過剰生産するタイプは治療が難しいとされてきた。ところが近年、ハーセプチンをはじめHER2を攻撃する薬がいくつも開発され、このタイプは最も予後が良好な乳がんと考えられるようになった。

    使える薬の種類が増えれば、組み合わせのバリエーションも豊富になり、がんの特徴や患者の置かれた状況に合わせて治療法を選べるようになる。外科手術や放射線療法の進展とも相まって、乳がんは本格的なテーラーメード治療の時代に入った。

 

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