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一気に進む? 海面上昇 海面上昇を招く新たな脅威 なだれ落ちる氷床

掲載日:2008年4月17日

日経サイエンス5月号 革命前夜の物理学
  • 雪解けシーズンに起きる雪崩。春が近づいて暖かくなり、冬場に降り積もった分厚い雪の層が一気に斜面を滑り落ち、ときにスキー客や登山者の命を奪う。地球温暖化が進めば、この雪崩と似たようなことが、桁外れのスケールで南極大陸やグリーンランドを覆う巨大氷床で起きる可能性が指摘されている。巨大氷床が滑り落ちる先は広大な海だ。

    現実に起きれば、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた地球温暖化の予想シナリオをはるかに上回るスピードで海面は上昇する。上昇の高さは数十cmどころではなく、数mから数十mに達する。この海面上昇の勢いに人類が抗し得るのかどうかは未知数だ。

    南極大陸の氷床は長い年月をかけて岩盤上をゆっくりすべりながら海に流れ込む。この氷が海に流れ込んで蒸発する水分量と、南極大陸に降る雪の量がほぼ等しいので、海水面は一定に保たれてきた。気温が上がり、氷が水となって解け出す量が増えると海面上昇を招くが、その影響は小さいと考えられていた。IPCCによる海面上昇予測値も主に海水の熱膨張に基づくものだ。

    しかし、これまでの予測に含まれていない要因がある。最近明らかになってきた南極氷床と岩盤の間に存在する膨大な量の水だ。氷床下には大きな湖や、そうした湖から流れる川があり、これらが潤滑剤のように氷床をすべりやすくしているのだ。

    この“潤滑剤”のため、氷床は従来考えられたより不安定で、少しの刺激でも崩れやすいらしい。氷床の末端、海に突き出して浮かぶ棚氷が温暖化の影響で崩壊すると、歯止めがなくなった氷床は急速に海にすべり落ち、海面上昇を招く恐れがある。実際、2002年のラーセンB棚氷の崩壊で、氷流の速度が速まっていることがわかった。

 

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