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気候変動で海洋熱波の頻度が倍増

掲載日:2018年10月11日

2018年10月号表紙

海洋生態系を荒廃させる極端な熱事象は今後、増加が予想される。

ラッコの死骸を調査する2人の研究者(女性)
2015年、アラスカ沖で発見されたラッコの死骸。研究者らは海洋熱波によって発生した有害藻類ブルームによる毒素が原因ではないかと考えている。
Paul Nicklen/NGC/Getty

地球温暖化に伴い、海洋熱波の頻度は増えて一層極端になる、という研究結果がNature 2018年8月16日号360ページで発表された。熱波の発生は海の食物連鎖網を破壊し、生物多様性を一変させてしまう可能性がある。

研究チームは、1982~2016年に人工衛星を使って測定した海の表面温度を分析し、海洋熱波の頻度が2倍になっていることを発見した。海面で起こるこの極端な熱事象は数日~数カ月にわたって続き、その範囲は数千kmに及ぶことがある。研究者らは現在、今世紀末までに地球の平均気温は産業革命前のレベルより3.5℃上昇すると予想しているが、その場合、海洋熱波の発生頻度は41倍、つまり100日に1回から3日に1回に増加する可能性がある。論文の筆頭著者であるベルン大学(スイス)の気候学者Thomas Frölicherは、「今日の海洋熱波は、以前に比べて持続期間は長く、頻度は高く、強度は大きく、また範囲は広くなっています」と言う。彼はまた、これらの変化は気候の自然な変動に基づく予想を超えているとし、海洋熱波の87%が人為的な地球温暖化の結果だと結論付けた。

地球規模の現象へ

研究者が海洋の熱波に注目し始めたのは、例えば2014~15年に北東太平洋に出現し、アラスカのラッコやカリフォルニアのアシカ、北米の漁場に大打撃を与えた巨大な「ブロブ(暖水塊)」といった、極端な海洋熱波に直面するようになってからだ。また、世界中のサンゴ礁に壊滅的な被害を与えた2015~16年の大規模なエルニーニョも熱波への注目に寄与した(2016年1月号「『ゴジラ級』エルニーニョを捕まえろ!」、2018年7月号「グレートバリアリーフの被害状況が明らかに」参照)。

「海洋熱波が強調されるのは、陸上と同様に極端な事象が海洋でも起こり得るという認識からです」と、スタンフォード大学(米国カリフォルニア州)の気象学者Noah Diffenbaughは話す。彼はまた、今回のFrölicherらの研究が地域的な問題を全球的な視点から見ている点も評価する。

コロラド大学ボールダー校(米国)の環境科学共同研究所の海洋物理学者Kris Karnauskasは、今回の研究は、海洋の長期的な温暖化傾向から短期的で急激な温度上昇を分離するための有益な枠組みを提供するものだと評価する。彼は、海洋熱波は自然な温度変動で生じる海面温度の上昇が、海洋の温暖化により極端になった結果であるかもしれないと言う。

現在、Frölicherのチームは海洋熱波の傾向と、それが地域や地方レベルの生態系に与える影響を探るためのモデルの開発に取り組んでいる。

(翻訳:三枝小夜子)

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181004
原文:Nature (2018-07-16) | doi: 10.1038/d41586-018-05736-3 | CRISPR gene editing produces unwanted DNA deletions

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