マガジン - Nature ダイジェスト -

外部の利益との相反を研究論文に明示する

掲載日:2018年5月8日

2018年5月号

ネイチャー・リサーチの各ジャーナルは、非金銭的な利益相反の申告を論文著者に求めます。

科学において利益の相反(conflicts of interest)を生むものは何でしょうか。いろいろな定義が存在していますが、研究者の客観性を曇らせる影響力だとする点では、ほぼ一致しています。具体例として金銭を挙げる人もいますが、非金銭的なもの、例えば、組織に対する忠誠、個人的信念、野心などもそうした影響力を持ちます。

Natureをはじめとするネイチャー・リサーチの各ジャーナルでは、万一、緊張関係と対立関係が生じる場合の非金銭的原因を一部考慮に入れることとし、2018年2月より、研究論文、総説、解説、研究分析の著者に対して、非金銭的な利益相反の開示を要請しています(参照)。

(金銭的および非金銭的)利益相反というのは、データの客観的な発表、分析、解釈に関する論文著者の判断と行動に対して影響を及ぼす可能性がある、副次的利益(論文の客観性、誠実性、価値を直接的に害する、あるいは害していると考えられる状態を生じさせるもの)が存在すること、と定義されます。非金銭的な利益相反に該当するものの例としては、組織と個人との間にさまざまな個人的関係または職務上の関係がある場合や、政府機関、非政府機関、支援団体、ロビー組織の一員である場合、鑑定人(裁判所で専門的な知識に基づいて意見を述べる人)を務めている場合が含まれます。

非金銭的な利益相反に関しては、懸念の度合いが異なることを我々は認識しています。例えば、金銭的な利益相反よりも解消が難しい非金銭的な利益相反に重点を置くと、「金銭的な利益相反は申告すれば十分で、その解消は要求されない」という誤ったメッセージを送ることになりかねないと主張する人もいます。また、スコットランドの裁判官が2005年の訴訟で、無給の鑑定人は、多額の報酬を得ていたタバコ会社側の鑑定人よりも(自らの信念を押し通すために)見方が偏る可能性が高い、という結論を示しました(L. Friedman and R. Daynard Tob. Control 16, 293; 2007)が、これに賛成する人は少ないことでしょう。

産業界がスポンサーとなっている研究における金銭的な利益相反によって、研究の計画や分析、報告に偏りが生じる可能性のあることが、非常に多くの研究によって明らかにされてきました。一方、非金銭的な利益相反の影響に関する研究は、それに比べるとかなり少ないと言わざるを得ません。それでも、こうした関連性が、研究の計画や解釈、誌上発表された研究成果のその後の受け止め方に不本意な影響を与える可能性があると予想するのが妥当です。こうした可能性に対する予防措置として、臨床研究誌と生物医学研究誌の数誌はここ数年で、非金銭的な利益相反の開示を義務付けるようになりました。科学研究の過程に対する目が厳しくなっている昨今、透明性のある情報開示によって、読者一人一人が誌上発表された研究成果についての結論を出せるようにすることが、国民の信頼を維持するための最良の道なのです。

ネイチャー・リサーチの各ジャーナルは今後、査読過程の一環として、利益相反情報を開示した文書全文を査読者に閲覧させ、インターネット上で公表します。我々としては、査読と出版の過程における情報開示を推進しますが、利益相反を開示、管理、解消することは、著者とその所属機関の責任となります。利益相反に該当し得る状況が開示されていないことに我々が気付けば、出版された論文の訂正(correction)を掲載しますが、研究の信頼性に懸念を生じさせるほど重大な利益相反となる場合が稀にあり、さらに強力な対策を講じることがあります。また査読者は、重大な金銭的、非金銭的利益相反がある場合、辞退を申し出ることが可能です。編集スタッフも、利益相反があれば会社に申告しなければなりません。

我々が、金銭的な利益相反に関する論文著者向けの方針を初めて公表したのは2001年です。当時の対象は一次論文だけでしたが、現在は、News & Viewsや書評なども該当します。

(翻訳:菊川要)

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