コラム - 科学のおすすめ本 -

真鍋博のプラネタリウム -星新一の挿絵たち

推薦者:永山悦子 氏(科学ジャーナリスト)

掲載日:2013年9月9日

「真鍋博のプラネタリウム -星新一の挿絵たち」
 ISBN: 978-4-480-43086-1
 定 価: 680円+税
 著 者: 真鍋博 氏・星新一 氏
 発 行: 筑摩書房
 頁: 224頁
 発行日: 2013年8月7日

SF作家の親睦団体「日本SF作家クラブ」が今年創立50周年を迎える。このクラブの初代会長は、「ショートショートの神様」として有名な星新一(1926-97年)だ。そこで、創立50周年を記念して、星新一本が復刊されている。その中の異色の1冊が本書だ。

星は1001編のショートショートを発表したが、その約三分の一の挿絵を担ったのがイラストレーターの真鍋博(1932-2000年)。「独特でシャープで繊細」といわれる真鍋の個性的なイラストは、星作品の世界観と見事に調和した。

本書は、星が1001編目のショートショートを発表した区切りに、1958年以降の真鍋の挿絵の代表作を収録したもの。初版は83年に新潮社から出版され、その後絶版になっていたが、今夏に復刊された。82作品のイラストが掲載され、それぞれ星作品の冒頭部など該当する原稿も一緒に紹介されている。

自己中心的な大量消費社会を揶揄した『おーい でてこーい』(58年)の穴をのぞき見る人々のイラストが、真鍋が星作品へ提供した第1作。他にも、美人ロボットを通して人間の欲望を描いた『ボッコちゃん』に登場するバーのイラスト、自宅を国家と主張する男と銀行員のやりとりを描いた奇妙な『マイ国家』のイラストなど、風刺と科学と矛盾に満ちた星作品の世界に、否応なく引き込まれずにはいられない数々のイラストを描いた。

初版で付けられたまえがきで、星は真鍋について「あまりにも個性的。驚くべき勉強家」と分析し、「(作品を見直すと)25年の経過を考えさせられる。社会や科学技術の大変化である。私が書きはじめたころは、人類の宇宙進出など、はるか未来のことと思っていた。それが現実のものとなり、バラ色の未来学の時代となり、(中略)公害があり、オイルショックがあり、悲観的な未来論もあった。電卓だって、こう高性能になるとは予想もしなかった」と書いた。真鍋も未来を見つめる。あとがきで「わたしは、イラスト未来派とも言われ、未来を予想したり予測したりもしてきて、(中略)おおかたはその通りになった」と書く。

真鍋と星は大阪万博の企画にも参画し、日本の未来を思い描いた。真鍋が「未来学」に関して書いた原稿の一節、「科学技術の先行する未来でなく、有機的で神経や精神につながった未来。変わるべきもの、変えてはならぬもの、変えられないもの、変貌の速いもの、遅いもの、動かぬもの、それを調整し前進させるのは人間だけだ。未来を占ってはならない。創るべきものだ」(エッソ・スタンダード石油広報誌「Energy」1967年第4巻2号)との文章も本書内で紹介され、星や真鍋の未来への思い、責任が感じられる。

なお、本書のタイトルについて、真鍋は「星さんの宇宙にまたたくマナベ座という意味がこめられている」と記している。

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