コラム - 科学のおすすめ本 -

10Xの世界-素粒子から銀河まで-

推薦者:サイエンスポータル編集長

掲載日:2013年6月24日

「10Xの世界-素粒子から銀河まで-」
 ISBN: 978-4-88392-917-7
 定 価: 952円+税
 著 者: 上田剛慈 氏
 発 行: 彩図社
 頁: 85頁
 発行日: 2013年4月24日

ふだんの自分の生活の中で、ものの長さや大きさを測る「物差し」「尺度」の単位には、どういったものがあるのだろう。 身長や胴回りなどはセンチメートル。約75センチメートルの歩幅でテクテク歩き、乗り込む通勤電車の1車両は長さ約20メートル。途中で見える東京スカイツリーは高さ634メートル。自宅から職場までは直線で約50キロメートルだ。帰宅して出されたカツオの刺身は厚さ1センチメートル未満。「もっと厚みのあるのが食べたい」と願いつつ晩酌も進んで、つい“メートル”を上げてしまう。…とまぁ、せいぜいセンチメートルからキロメートルの範囲かな。

ところが、この本が示すのは、素粒子から銀河までの壮大なスケールだ。ユニークなのは「10のX乗」というそれぞれの尺度で、それぞれの世界を描いていること。X乗はマイナス(-)17乗から-16乗、-15乗…と10倍ずつ増えていき、18乗、19乗、20乗へと至る。10の-17乗メートルは10アトメートル(am)という素粒子の世界、10の20乗メートルは10京キロメートル(1万光年)という銀河系レベルの世界だ。

「10倍ごとに違った構造で世界が階層的にできていることや、それぞれの世界の主人公や登場人物を紹介するのがこの本の目的」(筆者)だ。それぞれの世界では、特徴的な科学的事象や知識が、カラーの模式図や写真などとともに見開き2ページ内にコンパクトに収められている。

例えば、「10の-8乗(10nm)=ナノテクの世界」。筆者は「ナノテクとは、数nm-数十nm程度の大きさでものを作ったり加工したりする技術です」と述べ、カーボンナノチューブについて触れる。ハイテク素材として注目されるこのチューブは、細いもので直径が3nmだという。インフルエンザ・ウイルスの直径は80-120nmだから、カーボンナノチューブの方が細い。「うまく利用すればカーボンナノチューブでウイルスを捕獲できるのではないか」と、勝手に考えてしまった。

他のページの世界でもいろいろな想像がわき起こり、楽しめる。通読して気が付いたのは、それぞれの世界にはそれぞれの尺度をもつ科学者たちがいて、それぞれに頑張って真理を探究しているということだ。微視的な世界から巨視的な世界まで、科学の世界は大きく、研究の世界は広い。尺度が違うと、身の回りの生活や社会、あるいは自分の生き方も違って見えてきそうだ。

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