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コラム - オピニオン -

国際宇宙ステーションは必要

大同工業大学 学長 澤岡 昭 氏

掲載日:2008年6月25日

大同工業大学 学長 澤岡 昭 氏

澤岡 昭 氏

 

国際宇宙ステーション(ISS)の建設が大詰めを迎えている。去る3月には土井隆雄飛行士が搭乗したスペースシャトル「エンデバー」によって、日本の宇宙実験棟JEM(きぼう)の船内保管室が、6月には星出彰彦飛行士が搭乗した「ディスカバリー」によって船内実験室が取り付けられた。残りは船外実験プラットフォームの取り付けのみである。来年度中には20年間以上も待ち続けてきた“きぼう”が完成する。最後に米国とロシアのモジュールが打ち上げられて、2010年にはISSが完成する。

“きぼう”の完成を前に自由民主党宇宙開発特別委員会において、国際宇宙ステーション建設の費用対効果の議論が行われている。この議論は5月に公布された宇宙基本法に基づく今後のわが国の宇宙開発のあり方に大きな影響を与えることであろう。筆者は4月にJEM利用ユーザーの立場から、巨額なISS建設の費用対効果について、同委員会で意見を述べる機会があった。

ISS建設にどの程度の費用がかかるのだろうか。この委員会に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提出した資料によると、2006年度までにISSプロジェクトに要した経費は5,926億円である。その内、JEMの開発に要した直接経費は3,304億円、残りは運用に要したコストである。昨年度と今年度を合わせると約7,000億円に達すると思われる。2009年以降2015年まで7年間、毎年400億円が必要であり、合計1兆円の科学技術開発としては前例のない巨大プロジェクトである。

ISS計画は米国が主唱し、ヨーロッパ11カ国、カナダ、ロシア、日本の合計15カ国が参加する国際プロジェクトである。このプロジェクトを提唱した米国の思惑は別としても、これに参加を要請された国は宇宙開発先進国として認知されたとうれしく感じたに違いない。このような雰囲気の中で、日本の国際宇宙ステーション計画参加は国民の好意的な後押しを感じながらのスタートであったと思う。

2回のスペースシャトル事故とスペースシャトルの技術的な問題による運航コストの増大によって、ISS建設は何度も暗礁に乗り上げた。この結果、計画の2倍以上の期間を要したことが、日本にとっても負担を倍増させる要因になった。

10年の予定が20年に延びたことによって、限られた予算の中で研究者の新たなる苦悩が始まっている。実験計画のリフレッシュは当然であるが、実験装置の仕様の変更はさらなるコスト増大を招くからだ。現在、わが国の国家財政は極端に逼迫(ひっぱく)しており、このような中でさらに毎年400億円を使うことが許されるのか。いまこそあらためて国民的合意が求められているのだと思う。ISS利用のわかりやすい説明は、この計画を推進してきた筆者の責務であると考えている。

遠くない将来に、日本の技術で日本人の宇宙飛行が行われる日が来る、と筆者は信じている。その準備のためにISSはかけがえのない機会であり、ISSなくして日本独自の有人飛行計画はあり得ないと考えている。

今の時点で、日本独自の有人飛行という可能性をつんでしまうのか。そうではなく、科学技術立国を掲げる日本として今は苦しくても独自の有人飛行に向けて必要な技術の獲得、蓄積を図る道を選ぶのか。筆者の結論は明らかである。

日本独自の有人飛行を目指す。それが、今後、毎年400億円を使うことの一番大きな意義であると考えている。

 

大同工業大学 学長 澤岡 昭 氏
澤岡 昭 氏
(さわおか あきら)

澤岡 昭(さわおか あきら)氏のプロフィール
1938年北海道生まれ。65年北海道大学物理学専攻修士課程修了。大阪大学助手、東京工業大学工業材料研究所助手、同助教授、教授を経て94年東京工業大学工業材料研究所長、96年同大学応用セラミックス研究所長、99年3月に退官、同年4月より大同工業大学長、現在に至る。99年から宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)技術参与として国際宇宙ステーションの応用利用推進にかかわる。専門は宇宙利用国際戦略論。文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会会長を務めるほか、同省キーテクノロジーのプロジェクト・デレレクターも。

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