コラム - ネクスト・ブレイク -

ゲリラ豪雨を予測せよ!…『ビッグデータ同化』で気象予測

理化学研究所 計算科学研究機構 データ同化研究チームリーダー 三好 建正 氏

掲載日:2015年3月30日

三好 建正 氏

三好 建正 氏

 

気象庁に初の大型コンピュータが導入されたのは1959年。また、気象衛星ひまわり1号が運用を開始したのは1978年。以来、天気予報は、コンピュータ技術と観測技術を両輪にして大きな進歩を遂げてきた。現在では、明日の台風の位置を、誤差100キロメートル以内で予測できる精度になっている。だが、それでもまだ、予報は不十分だ。特に、短時間で大きな被害をもたらす局地的大雨(ゲリラ豪雨)の予測は難しい。

この状況に、理化学研究所の三好建正氏(計算科学研究機構データ同化研究チームリーダー)は、最先端のデータサイエンスを駆使して「ゲリラ豪雨による災害を減らしたい」と熱意を語る。ゲリラ豪雨を予測するためには、急激に成長する“積乱雲の発生”をつかまねばならない。しかし、現在の雨雲レーダーの予測では、見えている雲の動きをとらえることはできても、新たに生まれる雲のことは分からない。豪雨や雷雨をもたらす積乱雲が発生して消滅するまでの寿命は、わずか30分程度。気象レーダーが雨を探知できても10分後には消えてしまう。

では、どうやって予測を前に進めるのか。三好氏は、スーパーコンピュータがはじき出す大容量のシミュレーションデータと、最新の観測技術がもたらす高精度の観測データを30秒ごとに突き合わせて予測のズレを修正する「ビッグデータ同化」という手法で挑もうとしている。計算と観測には、最先端技術の三種の神器を用いる。1つ目は、日本最速のスーパーコンピュータ「京」、2つ目は、2014年に打ち上げられた静止気象衛星「ひまわり8号」および2016年打ち上げ予定のバックアップ機「ひまわり9号」、そして3つ目が2012年に稼動した「フェーズドアレイ気象レーダー」だ。

観測機「ひまわり8・9号」と「フェーズドアレイ気象レーダー」が本格稼動すれば、これまで30分かかった地球全体の気象画像の取得が10分に短縮でき、観測地を絞り込めば30秒ごとの取得も可能になる。一方、スーパーコンピュータ「京」の計算能力で、初期値のわずかなばらつきから生じる複数通りの予測結果をパラレルに計算し(*2014年7月には、10,240通りで3週間分の同時計算に成功したと発表→理化学研究所プレスリリース)その予測結果それぞれと観測データを照合して補正しながら精度を高めようとする。これらの計算を可能にする「京」のために開発された次世代型気象モデル「SCALE(スケール)」を使い、30分後の局地的な天気の変化を予測する計画だ。

ビッグデータを統合する最先端のデータサイエンスで、ゲリラ豪雨はいつ予測できるようになるのか。実現が待たれる。

 

三好 建正 氏

三好 建正(みよし たけまさ)氏のプロフィール
2000年、京都大学理学部卒業。同年、気象庁入庁。03年より2年間、人事院行政官長期在外研究員として米国メリーランド大学に留学し、博士号を取得。その後、気象庁予報部数値予報課技術専門官、メリーランド大学助教授を経て、13年より現職。現在、メリーランド大学大気海洋科学部客員教授、海洋研究開発機構アプリケーションラボ招聘主任研究員を兼務。13年からCREST研究代表者。08年度日本気象学会山本・正野論文賞、14年度文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。気象予報士。

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