コラム - インタビュー -

第3回「がれきを利用して防潮丘」

岩沼市震災復興会議 議長、東京大学大学院工学系研究科 教授 石川幹子 氏

掲載日:2012年1月13日

「復興グランドデザインに愛と希望を」

津波で押し流される航空機! 東日本大震災による津波被害を伝える映像の中でも、仙台空港の様子に衝撃を受けた人は多かったのではないだろうか。滑走路の一部を含め、空港に接する宮城県岩沼市も津波で死者183人、家屋の全壊718戸、半壊1,310戸、被害のうち1,240ヘクタールという大きな被害を受けた。その岩沼市で「愛と希望」を掲げる復興計画が進んでいる。日本学術会議会員として、被災地に対する「ペアリング支援」をいち早く提言し、さらに岩沼市震災復興会議議長として「岩沼市震災復興計画グランドデザイン~愛と希望の復興~PDF」をまとめ、具体的な支援活動に取り組む石川幹子・東京大学大学院工学系研究科 教授に、郷里でもある岩沼市の復興状況について聞いた。

- 今回の大震災で何より衝撃的だったのは津波の映像でした。仙台空港のすぐ隣に位置する岩沼市の市街地、住宅地も相当な被害を免れなかったと思いますが。

石川幹子 氏
石川幹子 氏

ええ。2番目に行ったことが、どのようにして津波に対して安全な町をつくるか、ということでした。宮古市田老地区で明らかになったように、堤防のみで津波を防ぐという方法では、限界があることがはっきりしています。多重防護による減災という考え方をとらないと駄目、ということです。

前にもお話ししたように津波で大きな被害が出たのは、貞山堀から海側の区域です。伊達政宗の時代、この辺りは砂浜でした。砂浜に育ってくれる木はクロマツしかなかったので、これまでクロマツが防潮林の役割を果たしていました。しかし、地下水位が高いため、根が浅くしか張れず、今回津波で皆、流され、それがさらに家を破壊するという結果になりました。

ところが、この地域で、クロマツが残った所があるのです。高さ10メートルの丘があったのです。この丘に逃げ遅れた人たちが登って助かっているのですが、この丘のために波が分かれて力が弱くなり、そのため貞山堀のその個所のクロマツだけは生き残りました。

この丘は、高度成長期の後に、ゴミを集めて造ったのです。公園になっているのですが、これを見て、「これならやれる」と思いました。単なる防潮林では、また津波が来たら流されてしまいます。丘をたくさん造れば、津波の力も弱められると考えたのです。津波によるがれきが、山のようになっていますし、そのがれきを使って丘を造れば、一挙両得どころか、一石三鳥ではないか、と思いついたわけです。復興会議で、「千年希望の丘」という名前にしました。

公園施設として造れば、国からの補助がある程度出ます。しかし、たくさんの丘を造ると自治体の負担も大きくなります。そこで、ひとつひとつの丘に名前を付けて、その名前の権利を売ろうと考えました。いわゆるネーミングライツという考え方で、日本だけではなく、世界に募集をする予定です。この計画は、復興整備計画として、動き出しています。

- とても面白いアイデアですね。

いろいろな方の支援があってできることですが、丘を造ることで、土壌が確保され、地下水の影響を緩和することができます。これにより、クロマツだけの単層林から、常緑広葉樹や落葉広葉樹の混交林をつくることができます。

- どういう木を植えるのですか。

現地に行きますと、点々と津波にやられず残っている木があるのです。それらはケヤキ、コナラといった木です。ケヤキは1.5メートルも根を張りますから、津波が来ても流されなかったわけです。農家の方々が、居久根(屋敷林)という形で少し盛土をした所にそれらを植えていたのです。居久根というのは、宮城県から岩手県南部にかけてみられる屋敷林です。津波の塩害で杉は枯死しつつありますが、スダジイ、シロダモなどの常緑広葉樹は元気です。ですから、これらの津波に耐えた樹種に着目し、常緑と落葉広葉樹の混交林をつくっていくのがいいのではないかと思います。

これも現場を見て考えたことです。

(続く)
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石川幹子 氏
石川幹子 氏
(いしかわ みきこ)

石川幹子(いしかわ みきこ) 氏のプロフィール
宮城県岩沼市生まれ、宮城学院高校卒。1972年東京大学農学部農業生物学科卒、76年米ハーバード大学デザイン学部大学院ランドスケープ・アーキテクチュア学科修士課程修了、94年東京大学大学院農学系研究科農業生物学専攻緑地学博士課程修了。工学院大学建築学科特別専任教授、慶應義塾大学環境情報学部教授を経て2007年から東京大学大学院 工学系研究科都市工学専攻 教授。博士(農学)。日本学術会議会員。専門分野は都市環境計画、ランドスケープ計画。岩沼市震災復興会議議長のほか、宮城県震災復興会議委員も。03年欧州連合(EU)国際基金21世紀の公園国際競技設計1位、08年四川vl川大地震復興グランドデザイン栄誉賞受賞。主な著書に「都市と緑地」(岩波書店)、「流域圏プランニングの時代」(技報堂)、「21世紀の都市を考える」(東京大学出版会)など

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