コラム - インタビュー -

第1回「予防的な適応策の重要性」

茨城大学 地球変動適応科学研究機関長・教授 三村信男 氏

掲載日:2008年7月14日

「温暖化対策は2正面作戦で」

7-9日に行われた洞爺湖サミットでは、焦点だった「2050年までに温室効果ガス排出量50%削減」という目標設定が合意という形には至らなかった。しかし、「世界全体の達成目標」と性格付けられ、「ビジョンを共有」という言葉で首脳宣言に盛り込まれた。中国やインドなど新興国を加えた主要経済国会合の宣言にも、世界全体の長期目標を世界各国が持つことを是認する表現が入った。環境省の地球温暖化影響・適応研究委員会座長として、報告書「気候変動への賢い適応」をまとめたばかりの三村信男・茨城大学 地球変動適応科学研究機関長・教授に、賢い対応とは何かなど地球温暖化に対する効果的かつ現実的な対応策を聞いた。

- 地球温暖化対策は2正面作戦が必要、と主張されていますが、どのような考え方でしょうか。

三村信男 氏

三村信男 氏

 

地球温暖化対策の究極の目的は、温暖化の悪影響を人類社会の持続性にとって危険とならないレベル以下に抑えることだと考えています。そのためには、緩和策と呼ばれるものと適応策と呼ばれるものの二本立てで進めなければならないというのが2正面作戦の意味です。

緩和策というのは二酸化炭素(CO2)の排出量を削減し、大気中のCO2濃度を安定化、つまり一定の水準以下にとどめるようにしようということです。これに対し、適応策は温暖化になると現れる悪影響に対して、先手を打って備えをとっていこうということです。水資源が少なくなる。あるいは逆に洪水が増える。農業生産が打撃を受ける。健康に悪影響が出る、といったことに対しては、それが予想される地域ごとにそれぞれ対策をとる必要があります。

私は、温暖化の悪影響を抑え込むためには、緩和策と適応策の組み合わせが必要と言っているわけです。

まず緩和策についてですが、温暖化の危険な水準つまり世界が壊滅的な打撃を受けるとか、人間の生存が危うくなる。そのようなことが起きない水準に温暖化ガスを安定化させるということですね。では、将来的にどうなるかですが、森林や海洋はCO2を吸収する能力を持っています。これと同じだけの量を人間が排出すれば、大気中のCO2濃度は一定に落ち着くわけです。そういう水準に排出量を下げることが目標になると思います。

ところが今のCO2排出量は、炭素の量に換算して年間70億トン以上です。自然界の吸収能力は30億トンと言われていますから、倍以上排出しているわけです。2050年に排出量を少なくとも半減しようというのは、排出量と吸収量をつり合わせて気候を安定させるという考え方が根拠になっているのです。ただし、安定化したときのCO2の濃度レベルによって、気温上昇が2℃上昇で安定化するのか、それとも3℃になるか、4℃を超えてしまうか違ってきます。ですから、今世紀の後半といったずっと先には、半減では済まず、もっと排出を減らさなければならないと考えられています。

いずれにしろ数十年を要する長期的な事業ですから、緩和策はまさに長期目標です。今世界各国の首脳が危機感を持って取り組もうと、G8などで政治的な議論を行っていることは、大変意義のあることだと思います。問題は、それを一時の話題にとどめないということです。今は長期的な人類の挑戦の第一歩がはじまった段階だと考えています。

2番目の適応策とは何かということです。CO2は放出されると大気中に約70年留まると言われます。今あるCO2は、昔放出されたCO2がずっと蓄積されたものというわけです。仮に世界の首脳が合意して、今すぐCO2の排出を減らすことができても、その効果はすぐには出てきません。大気中のCO2濃度の増加が止まるのにタイムラグがあるわけです。その間も気候変動は進行しますから、自然災害や水不足が起きるなどいろいろな影響が出て来ると思うんですね。そういう影響が出て来るのは分かっているのだから、予防的に対策をとることが必要で、それが適応策ということです。

すでに影響が出始めていますから、適応策はすぐにでも始めなければならない、ある意味では短期的、中期的な対策なわけですね。ですから2正面作戦という意味は、長期的緩和策の手を打ちつつ、目前の問題にも適応する両面作戦が必要ということなのです。

- 地球温暖化対策は2正面作戦が必要、と主張されていますが、どのような考え方でしょうか。

地球温暖化対策の究極の目的は、温暖化の悪影響を人類社会の持続性にとって危険とならないレベル以下に抑えることだと考えています。そのためには、緩和策と呼ばれるものと適応策と呼ばれるものの二本立てで進めなければならないというのが2正面作戦の意味です。

緩和策というのは二酸化炭素(CO2)の排出量を削減し、大気中のCO2濃度を安定化、つまり一定の水準以下にとどめるようにしようということです。これに対し、適応策は温暖化になると現れる悪影響に対して、先手を打って備えをとっていこうということです。水資源が少なくなる。あるいは逆に洪水が増える。農業生産が打撃を受ける。健康に悪影響が出る、といったことに対しては、それが予想される地域ごとにそれぞれ対策をとる必要があります。

私は、温暖化の悪影響を抑え込むためには、緩和策と適応策の組み合わせが必要と言っているわけです。

まず緩和策についてですが、温暖化の危険な水準つまり世界が壊滅的な打撃を受けるとか、人間の生存が危うくなる。そのようなことが起きない水準に温暖化ガスを安定化させるということですね。では、将来的にどうなるかですが、森林や海洋はCO2を吸収する能力を持っています。これと同じだけの量を人間が排出すれば、大気中のCO2濃度は一定に落ち着くわけです。そういう水準に排出量を下げることが目標になると思います。

ところが今のCO2排出量は、炭素の量に換算して年間70億トン以上です。自然界の吸収能力は30億トンと言われていますから、倍以上排出しているわけです。2050年に排出量を少なくとも半減しようというのは、排出量と吸収量をつり合わせて気候を安定させるという考え方が根拠になっているのです。ただし、安定化したときのCO2の濃度レベルによって、気温上昇が2℃上昇で安定化するのか、それとも3℃になるか、4℃を超えてしまうか違ってきます。ですから、今世紀の後半といったずっと先には、半減では済まず、もっと排出を減らさなければならないと考えられています。

いずれにしろ数十年を要する長期的な事業ですから、緩和策はまさに長期目標です。今世界各国の首脳が危機感を持って取り組もうと、G8などで政治的な議論を行っていることは、大変意義のあることだと思います。問題は、それを一時の話題にとどめないということです。今は長期的な人類の挑戦の第一歩がはじまった段階だと考えています。

2番目の適応策とは何かということです。CO2は放出されると大気中に約70年留まると言われます。今あるCO2は、昔放出されたCO2がずっと蓄積されたものというわけです。仮に世界の首脳が合意して、今すぐCO2の排出を減らすことができても、その効果はすぐには出てきません。大気中のCO2濃度の増加が止まるのにタイムラグがあるわけです。その間も気候変動は進行しますから、自然災害や水不足が起きるなどいろいろな影響が出て来ると思うんですね。そういう影響が出て来るのは分かっているのだから、予防的に対策をとることが必要で、それが適応策ということです。

すでに影響が出始めていますから、適応策はすぐにでも始めなければならない、ある意味では短期的、中期的な対策なわけですね。ですから2正面作戦という意味は、長期的緩和策の手を打ちつつ、目前の問題にも適応する両面作戦が必要ということなのです。

(続く)
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三村信男
三村信男 氏
(みむら のぶお)

三村信男(みむら のぶお)氏のプロフィール
1949年生まれ、74年東京大学工学部都市工学科卒、79年東京大学工学系研究科都市工学博士課程修了、83年東京大学工学部土木工学科助教授、84年茨城大学工学部建設工学科助教授、95年茨城大学工学部都市システム工学科教授、2006年から現職。アジア、太平洋各国の気候変動の影響評価と適応策を探る国際共同研究多数。工学博士。

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