インタビュー

第5回「新たなライフスタイル創出」(倉員桂一 氏 / フェリカネットワークス株式会社 取締役副社長)

2008.01.21

倉員桂一 氏 / フェリカネットワークス株式会社 取締役副社長

「日本発の技術 進化するICカードと携帯の融合」

倉員桂一 氏
倉員桂一 氏

非接触ICカードを組み込んだ携帯端末が、交通、通信に限らず買い物その他、日常生活のありようを大きく変えようとしている。何枚もの各種カードのみならず、小銭すら持ち歩かなくても済む。そんな時代を可能にした基本技術である携帯端末向け非接触ICカード技術方式「モバイルFeliCa」の開発とその応用に取り組んでいる倉員桂一・フェリカネットワークス株式会社取締役副社長に、モバイルFeliCa技術開発の経緯、応用の現状、さらにはICカードと携帯機能の融合がどこまで進化するかの見通しなどについて聞いた。

―最近のモバイルFeliCaの応用事例としてはどのようなものがありますか?

フェリカネットワークスでは、従来、モバイルFeliCaの利用の中心となっている決済サービスや会員証サービスに加えて、さまざまな利用シーンを簡易に実現できるサービスプラットフォームとして、「ピットモット」の提供を開始しました。ピットモットは、個別に携帯電話用アプリケーションを開発するよりも安価で、簡単、スピーディにモバイルFeliCaを利用したポイントサービスやチケットサービスの導入を可能とするアプリケーションです。ピットモットのアプリケーションを一度ダウンロードすれば追加のアプリケーションをダウンロードしないで最大100程度の異なる電子チケットやポイントカード、クーポンなどを利用することができるようになります。

これによりモバイルFeliCaでしか実現できない、一台の携帯電話で複数のサービスを利用できる便利さを体験できると思います。

現在、ピットモットの最初のアプリケーションとして電子チケットを中心に展開を始めており、演劇の入場チケットや東京ゲームショウ、東京モーターショーでの入場チケットとして実際に導入されました。引き続き会員証やポイント・クーポンなどのサービス提供者に対してもピットモットを提供し、さらなるサービスの拡充と機能拡張を図ります。

―新しいサービス展開についてはどのようなものがあるでしょう?

これまでお話してきたとおり、モバイルFeliCaを使ったサービスは、電車、飛行機の乗車券、電子マネー、電子チケット、ポイントカード・クーポンなど決済に連動したサービスのほか、家の鍵や入館証など多彩な利用が進んでおります。将来期待される応用例としては、ヤマハ発動機が電動バイクの試作機にFeliCa技術を使いおサイフケータイをかざすことによりバイクの鍵の代わりにしたり、携帯電話でダウンロードした情報をバイク本体に読み込ませてさまざまなサービスを利用するデモンストレーションを昨年開催された東京モーターショーで参考出展しました。

このように、今後はモバイルの利便性とネットワークを介したサービスのそれぞれの特徴を活かしつつ、従来の垣根を越えてモバイルFeliCaのバリューやサービスが協調していくことにより、利用者や事業者にとってさらに魅力的なサービスが増えてくることが期待されます。具体的には、電子マネーで支払う際や電子チケットでの入場ゲート通過時、来店ポイントの取得時など、「携帯電話をかざす」際にリーダライタ端末より各種広告情報や有用な情報がプッシュ配信され、携帯電話のディスプレイで表示できるサービスなども検討しております。

―注目度は今後さらに上がっていきそうですか?

おサイフケータイをユーザの一番身近なツールとして利用するサービスは世界中で検討されています。しかし、商用での高度利用となると日本での実現状況は圧倒的に先行しており、成功事例として世界中から注目されています。

昨年11月にフランス・パリで行われた世界最大のカード関連展示会・カンファレンスのCartes2007ではJapan, Country of honorと銘打ってモバイルFeliCaのパートナー企業も大いに注目されました。JR東日本、NTTドコモ、ルネサステクノロジーと共同で当社も日本におけるモバイルFeliCaの導入状況および各サービスと今後の展開について講演を行い多くの来場者を集めました。

国内においては昨年のIC CARD WORLD2007で、「流通」「金融」「チケット」の3つのソリューションを提案し、その中でも、おサイフケータイを使ったATMのデモンストレーションは、各種メディアに大きく取り上げられ多くの反響がありました。

このようにモバイルFeliCaは、ここ数年でかざすことができる場所も、対応携帯電話も急速に普及が進み、一般利用者の目に触れ、利用できる環境が整ってきました。それに伴い関連ビジネスの今後の大きな発展が期待されると同時に利用者も、その利便性を実感できる機会が増えていくことでしょう。今後も日本発のこの技術をさらに発展させ、ひとつの社会基盤となるように普及と拡大に努め、新しいライフスタイルを創出し、世界に広げていきたいと考えています。

今年も当社は3月に東京ビックサイトで開催される「IC CARD WORLD 2008」(主催:日経新聞社)に出展いたします。ここでは実際のPOSレジスタ、リーダライタなどを設置し、ピットモットなどモバイルFeliCaのサービスを疑似体験していただき、利用者や導入を検討している事業者に対し提案を行う予定です。ぜひお越しいただきその将来性を感じていただけたら幸いです。

フェリカネットワークス ブース
IC CARD WORLD2007のフェリカネットワークス社 出展
フェリカネットワークス ブース
IC CARD WORLD2007のフェリカネットワークス社 出展
主催セミナーの光景
IC CARD WORLD2007のフェリカネットワークス社 出展景
主催セミナーの光景
IC CARD WORLD2007のフェリカネットワークス社 出展景

(完)

倉員桂一 氏
(くらかず けいいち)
倉員桂一 氏
(くらかず けいいち)

倉員桂一(くらかず けいいち)氏のプロフィール
1957年茨城生まれ、81年東京大学工学部卒、日立製作所入社、94年半導体事業部マイコン設計部 SH マイコン第一 Grリーダ、02年半導体グループマイコンビジネスユニットIC カード本部長、03年 IT 戦略統括部エグゼクティブ、04年から現職。91年プリンストン大学電子工学研究科修士課程修了、07年先端技術ベースの経営戦略に関する研究で高千穂大学から博士(経営学)を取得。

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