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コラム - インタビュー -

第3回「スパコン作り、何が難しいのか」

理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 プロジェクトリーダー 渡辺 貞 氏

掲載日:2006年11月7日

「再び世界一のスパコンを目指して」

名実ともに世界一のスーパーコンピュータ作りを目指す国のプロジェクトが動き出した。
「次世代スーパーコンピュータの開発と利用」で、国の第3期科学技術基本計画の中では国が集中的に投資して推進する「国家基幹技術」としても位置づけられている。
開発と運用の主体となる理化学研究所の渡辺 貞(ただし)プロジェクトリーダーに目的や展望を聞いた。

- 実際にこれから次世代スパコンを作っていくわけですが、基本的な課題はどんなことですか?

渡辺 貞 氏

渡辺 貞 氏

最適なシステム構成をどうするかが問題となります。国が作り広く使ってもらうスパコンですので、官や民、大学や研究所から課題や要望を聞くことから始めました。また米国が主ですが、これからのスパコンの動向も調査しました。それらを上回る性能を目指さなくてはなりませんので。各企業が現在どんなスパコンの技術を持っているのか技術調査も行っています。

また汎用とは言いながらも、ある程度は的を絞らなければなりませんので、これから大きな技術発展が見込まれ、かつその分野の技術開発競争で必須の道具となるナノテクノロジーとライフサイエンスの2つの分野を選びました。この2つを核に環境や天文など計21分野のアプリケーション・ソフトが最大の効率で性能を出せることを狙っています。

この9月から概念設計が始まり、大きく分けて富士通からの提案とNEC、日立の共同提案を詳細に検討して本年度いっぱいで基本仕様をきめる予定になっています。

- その中で今までに浮かび上がってきた技術課題はありますか?

計算の中心となるプロセッサー(CPU)の数は地球シミュレータのそれを上回ることは確実で何千、何万個という集合体となります。となると、問題となってくるのは消費電力です。地球シミュレータでも5M(百万)Wにもなっています。

今回、目標を設定しまして、システム全体で30MW以下にしようと思っています。これでも、ちょっとした発電所の出力にも相当します。ごくおおざっぱに言うと電気代は1MWで年間1億円なので、電気代だけでも年間30億円かかる計算になります。できるだけ低消費電力にする必要があります。

もう一つの課題はリーク(漏れ)電流です。半導体チップはトランジスタをたくさん詰め込んで計算を速くするためには回路を微細化しなければなりません。ところがあまりに微細化したために回路の絶縁が完全ではなくなり、何もしなくても電流がリークしてしまうのです。

こうした漏れ電流をいかに少なくするかも課題です。

これからのスケジュールは2007年度からハードの設計が始まり、2010年度末には一部、 運用開始が目標となっています。

(続く)
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渡辺 貞 氏

渡辺 貞氏のプロフィール
1968年東京大学大学院修士課程終了。専門は電気工学。68年日本電気入社。82年よりスパコン開発に従事。2003年日本電気ソリューションズ開発研究本部長。05年日本電気退社。06年文部科学省研究振興局研究振興官。06年8月より現職。1998年ACM/IEEEエッカート・モークリー賞受賞。2006年シーモア・クレイ賞受賞。

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