コラム - インタビュー -

第1回「次世代スパコンはなぜ必要か」

理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 プロジェクトリーダー 渡辺 貞 氏

掲載日:2006年10月24日

「再び世界一のスパコンを目指して」

名実ともに世界一のスーパーコンピュータ作りを目指す国のプロジェクトが動き出した。
「次世代スーパーコンピュータの開発と利用」で、国の第3期科学技術基本計画の中では国が集中的に投資して推進する「国家基幹技術」としても位置づけられている。
開発と運用の主体となる理化学研究所の渡辺 貞(ただし)プロジェクトリーダーに目的や展望を聞いた。

- スーパーコンピュータ(以下、スパコンと略)は研究や開発になぜ必要なのですか?

渡辺 貞 氏

渡辺 貞 氏

スパコンは今や天気予報や車の設計など科学・技術の道具として必要不可欠のものになっています。特に科学の分野では理論科学、実験科学に続く第三の科学、計算科学として確固たる地位を占めるまでになりました。

では計算科学で一体、何ができるのでしょうか?簡単に言えば、人間が見えないものを見えるようにすることができるのです。例えば非常に短い現象、物が燃える燃焼という化学反応があります。何百分の一秒、何千分の一秒という短い時間で複雑な反応が起きていますが、実時間では短すぎて人間の目には見えない。これをスパコンを使ったシミュレーションで見える時間、数秒なり数分なりに引き延ばすことができます。そうすれば複雑な反応をゆっくり分析できます。これで自動車のエンジン内部で起きている反応を調べ、より効率の良いエンジンを開発することもできます。

逆に非常に長い時間がかかる気候の温暖化のような現象があります。何百年、何千年後に地球の温度はどうなるのか?これは実験するわけにはいきません。スパコンを使えば現在の時間に縮めて、予測することができるわけです。

その他、ミクロの世界では分子の挙動を計算して新薬を開発したり、逆に巨大なスケールでは太陽系や銀河の一生を解明したりできるのです。こうしたシミュレーションには膨大な計算が必要でそのためにスパコンが必要なのです。

- 日本には地球シミュレーターという世界有数のスパコンがあるのになぜもっと高性能なものがいるのですか?

天気予報を例にとってみましょう。気象のシミュレーションには地球の表面を格子状のメッシュに分けます。その交点の一つ、一つで気温、湿度、風速などの条件を方程式に入れて次の変化を計算するのです。

地球シミュレーターが開発されたころの計算能力で、大体一日で計算が終わるには地球を100キロのメッシュで区切るのが限界でした。台風の目は10-20キロしかないので、これでは描けないのです。これを10キロ・メッシュにすると、台風の発生から消滅までシミュレーションできます。しかし、メッシュを10分の1にすると、交点の数は10x10で100倍となり、高さ方向も入れると計算量は1000倍にもなってしまうのです。

さらに1キロ・メッシュだとさらにその1000倍、話題になった竜巻やダウンバーストをシミュレーションするのはもっと細かな100メートル・メッシュ以下にしなければなりません。そのためにも、より高性能なスパコンが求められています。

(続く)
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渡辺 貞 氏

渡辺 貞 氏のプロフィール
1968年東京大学大学院修士課程終了。専門は電気工学。68年日本電気入社。82年よりスパコン開発に従事。2003年日本電気ソリューションズ開発研究本部長。05年日本電気退社。06年文部科学省研究振興局研究振興官。06年8月より現職。1998年ACM/IEEEエッカート・モークリー賞受賞。2006年シーモア・クレイ賞受賞。

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