コラム - ハイライト -

世界から多様な学生受け入れ 入試制度見直し学生寮充実で

国際基督教大学学長 日比谷潤子 氏

掲載日:2015年12月8日

国際基督教大学記者発表会(2015年12月2日)発言から

国際基督教大学(ICU)は、一昨年に献学(開学)から60年目を迎えた。人間で言えば還暦に当たり、献学時の志を振り返り、次の60年に向けて新しい歩みを始めようとしている。「国際化」を使命としてきた大学として「日英バイリンガルのリベラルアーツ教育」をさらに徹底したい。

日英バイリンガルというのは、全ての授業を英語で行うということではない。日本人学生が英語で異なる世界に触れるように、海外からの学生には日本語でもって日本という異なる世界に触れてもらう。日本語が海外からの学生にとっては日本に触れる窓になるからだ。

日比谷潤子 氏
日比谷潤子 氏

リベラルアーツによくある誤解

リベラルアーツに対しては誤解がある。学部の1,2年向け「一般教養」とか「導入教育」のことではないのか、というのがその一つ。リベラルアーツ教育の上に専門教育があるのだろう、と尋ねられることもある。そうではない。4年間を通した教育の形態を言うのであって、リベラルアーツ教育の中にも一般教養のプログラムはある。リベラルアーツ教育の目的は大学で研究を十分に行えるようなスキルを学んでもらうことだ。メジャーと呼ぶ30分野を設け、専門的な勉強ができるコースも用意している。

文学や哲学を対象にしており理系はないのでは、というのがもう一つの誤解だ。これもそんなことはない。どのような人でも自然科学、社会科学、人文科学をバランス良く身につけることが大事、という考えに基づく。文系でも数学や物理学を学ぶことを奨励し、それを十分しないと卒業できないカリキュラムになっている。

大学院に進むにはリベラルアーツ教育を受けると不利ではないか、というのも誤解だ。米国で博士号を取得した人の出身大学上位5校中4校はリベラルアーツ大学。全米科学アカデミー会員にリベラルアーツ大学で学部教育を受けた人が多い、という事実もある。

こういう能力を伸ばせる可能性のある人にリベラル教育を受けてもらいたい、と考える学生とはどういうタイプか。次のような能力を伸ばせる人たちといえる。「文系・理系にとらわれない広い領域への知的好奇心と想像力」と「的確な判断力と論理的で批判的な思考力」を備えており、さらに「多様な文化との対話ができるグローバルなコミュニケーション能力」や「主体的に問題を発見し、果敢に問題を解決してゆく強靱(きょうじん)な精神力と実行力」を持つ人たちだ。

「総合教養」を一般入試科目に導入

今年から4月の一般入試に「総合教養」という科目を新たに導入した。大学での学びに適しているかどうかを見るために、実際の大学の環境に近い形で試験したい、という考えに基づく。講義を聴いて、大事なことをしっかりノートに取り、それに関連する質問に答える力をみたい、ということだ。「総合教養」の試験では、まずあるトピックに関する15分ほどの短い講義を聴き、それに関する学際的な設問に答えてもらう。設問はトピックについて、人文科学、社会科学、自然科学の観点を盛り込んだものとなっている。

「総合教養」の入試科目を受けて入った1期生はまだ2学期が終わったところで、もう少し長いスパン(時間的間隔)で分析してみたいが、新しいことに挑戦する気概を持った学生たちが集まったという印象を持っている。総合型の入試問題を作ることは難しい。「総合教養」については、常に改良を加えないといけないと考えている。

春・秋入学制度さらに改良

入試についてはもう一つ新しい制度の導入を2017年9月から予定している。ICUは既に献学2年目の1955年から春だけでなく秋入学の制度を設けている。4月入学は、主として日本の高校で教育を受けた人を対象としており、9月入学は外国の教育制度の下で教育を受けた人が対象という仕分けだ。4月入学生には入学後に英語教育、9月入学生には入学後、日本語教育にそれぞれ力を入れる形を取ってきた。しかし、グローバル化により言語教育、受けた教育の形は多様化している。これまでのやり方が通用しなくなっている。それぞれの人に適した教育を用意し、4月、9月のどちらからも入学しやすい形にするのが狙いだ。

アジアの国々から来る学生と、日本の学生が共に学ぶことがますます重要になっている。現在、アジアからの入学生がちょっと少ない。もう少しアジアの国々から来てほしいという願いが、新しい入試制度の狙いの一つでもある。

右端が北城恪太郎ICU理事長
写真.右端が北城恪太郎ICU理事長

教育寮の新設

良質な教育を実践する欧米のカレッジ(単科大学)は「寮生活」が前提となっている。寮生活は人間的成長をもたらす場となっている、と考えられているからだ。ICUが献学2年目に最初の教育寮2棟を開寮した。「寮生活は大学における教育プログラムの一部」と、寮に関する基本原理と諸規定の中で明記している。ICUの特徴は、東京ドーム13個分に相当する広いキャンパス。現在九つある教育寮は全てキャンパス内にあり、全学生の約20%、国内外から集まった約600人が共同生活を送っている。

ICUのもう一つの特徴は、キャンパス内にある教員住宅に専任教員の約25%に当たる約40世帯が居住していることだ。教員と学生が生活の場でもさまざまな交わりができる。

2017年4月の開寮を目指し、キャンパス内に新たに2棟の教育寮を建設する。12月1日に起工式を行った。寮新設に関しては、学生、卒業生、教員、職員が参加する会合を14年度に40回開いている。寮は大学が学生に提供する単なる施設ではない。寮生活は大学における教育プログラムの一部である。対話を重んじるICUの教育理念を教育寮建設のプロセスにも反映したい、という考えに基づいてのことだ。

新しい寮は2棟とも1階は通学生、教員、職員も利用できる共有フロアとなる。共有フロアのアカデミックゾーンには大小六つのセミナー室があり、講演会やワークショップに利用できる。リラクゼーションゾーンには、キッチン、調理台があり食育に関するワークショップなどにも使える。着物の着付け、茶道など世界からの学生が日本文化を体験できる和室がほしいという声にも応えた。希望が多かった大きな共同浴室もある。中庭はバーベキューなども可能で、既存の寮からも入ってきやすい場所に配置している。

居住部分は2階以上の階に設けられている。居室はあまり広くしていない。共有のスペースに出てきて交流を図り、居室のみで生活を完結させないよう促すためだ。新寮が完成すると、教育寮の収容人数は現在の1.5倍の888人に増え、全学生の30%が寮に居住可能となる。

(編集者注:新教育寮の建設費については、同席の北城恪太郎〈きたしろ かくたろう〉理事長が、約40億円かかり、大学の基金から出すか、低利で借りることを考えている、と語った)

(小岩井忠道)

日比谷潤子 氏

日比谷潤子(ひびや じゅんこ)氏プロフィール
上智大学外国語学部フランス語学科卒。同大学大学院外国語学研究科言語学専攻博士前期課程修了、米ペンシルベニア大学大学院博士課程修了(言語学)。2002年国際基督教大学教養学部語学科準教授。教授、学務副学長を経て12年学長に就任、15年11月次期学長に再任が決定。

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