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モノへの風評対策から人への風評対策へ

福島大学 うつくしまふくしま未来支援センター長 山川充夫 氏

掲載日:2012年11月16日

サイエンスアゴラ「日本学術会議提言『学術からの提言-今、復興の力強い歩みを-』シンポジウム」(2012年11月10日、日本学術会議主催)講演から

福島大学 うつくしまふくしま未来支援センター長 山川充夫 氏

山川充夫 氏

 

福島県は、東日本大震災からの復興ビジョンの理念の第一に「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を挙げている。

福島大学うつくしまふくしま未来支援センターは、県民を対象に今年8月から9月にかけて意見募集調査を行った。現在、県内に住んでいる人だけでなく、東日本大震災後に県外へ移住した人も含まれている。約8割の人が「震災前、福島には誇れるものがあった」と回答した。このうち「誇れるもの」が「震災後に無くなった」と答えた人が21.3%、「震災前ほど感じられなくなった」という人が31.9%いる。「何を誇りにしていたか」というと、豊かな自然やおいしい農水産物を挙げた人が多い。

福島再生のためには雇用の確保が重要になる。しかし、除染対応以外には具体的なことはなかなかできていない。比較的対応が進む南相馬市の場合は、「心ひとつ 世界に誇る南相馬の再興を」をスローガンに掲げ、世界に発信できる安全・安心のまちづくりを目指している。再生エネルギー導入プランづくりや多重防災による災害に強いまちづくりだ。これをさらに進めようということで、地域循環の仕組みづくりも始まっている。植物工場を軸にした支援策で風評被害を払拭(ふっしょく)する生産システムを確立し、住まいと雇用の確保・拡大、地域の活性化を図る支援事業などだ。

福島大学うつくしまふくしま未来支援センターは、「提言書~県民が抱く福島への想い、未来への想い~PDFを10月22日に公表した。「生活者、女性に分かりやすい施策、ビジョン」と「『福島ここにあり』を示す戦略的情報発信」の重要性を指摘し、7つの提言をしている。この中に「モノへの風評対策から人への風評対策へ」と、「人が宝~教育環境の充実と心のケア」を入れた。

将来、福島の子供たちが結婚や出産、就職などの際に不利益を受けるのでは、と不安を感じている人が多い。農産物などモノへの風評被害は、時間とともに徐々に落ち着きを見せつつある。しかし、人に対する風評被害は、長期にわたって影響が続く恐れがある。農業、水産業、観光などの風評対策にとどまらず、人と地域を包括した総合的な風評対策に取り組む必要がある、ということを強調したい。

福島大学 うつくしまふくしま未来支援センター長 山川充夫 氏
山川 充夫 氏
(やまかわ みつお)

山川充夫(やまかわ みつお)氏のプロフィール
愛知県生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。福島大学副学長などを経て、2012年8月から現職。学長特別補佐。日本学術会議会員。福島県復興ビジョン検討委員会座長代理。南相馬市復興市民会議委員長も。専門は. 経済地理学・地域経済学・都市経済学。

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