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地域ぐるみで高齢者サポートの仕組みを(横倉義武 氏 / 日本医師会 会長)

2012.05.18

横倉義武 氏 / 日本医師会 会長

日本記者クラブ主催昼食会(2012年5月16日)講演から

日本医師会 会長 横倉義武 氏
横倉義武 氏

 地方で医療が崩壊しかけていることが問題になっているが、大都市の中でも同じことが起きている。地域の医療に何が必要で、何が欠けているかを検証していくことが大事だ。地域医療は、それぞれの地域で必要とされる医療を適切に提供していく仕組みが重要。国の方針や計画を都道府県の医療政策にいかに落とし込むかではなく、都道府県の実態に基づいたものとすべきだ。

 地域の医療を構築していくためには、さまざまな関係者を取りまとめている地域医師会が調整役となる必要がある。医療のない介護はあり得ず、介護のない医療もあり得ない。孤立した高齢者、障害者に対するサポートについては、特に地域の医師会の役割が重要だ。高齢化率が30%の私の地元、福岡県でも、10年くらい前から議論が行われている。その中で明らかになってきたことは、さまざまな人が関わりを持つ仕組みづくりが大事ということだ。例えば牛乳配達をされる方、新聞配達の方たちが、毎日牛乳が取り込まれているか、新聞がちゃんと受け取られているかを確認して、時には声がけするといったことである。昔、隣組という仕組みがあったが、ある意味ではこういう関わりが非常によかった。

 こうした議論の中から、認知症の方をサポートする具体的な取り組みが生まれている。きっかけは、認知症の方がいなくなり、20日ほどして溜め池でおぼれ死んでいるのが見つかった経験だった。いろいろな方が関わって地域ぐるみで認知症の方をサポートする仕組みづくりが必要だということになり、その取りまとめ役を担ったのが地域の医師会だった。

 こうした活動は、地域の医師会によって濃淡があるのは事実。しかし、地域に一番密着して仕事をしているのは地域の医師会である。日本医師会としては、地域医師会に対して一定のレベルの活動をするよう呼びかけていきたい。

 終末期医療の問題も重要だ。救命センターにお年寄りが運び込まれたりする場合、救急隊員にしても救命センターの医師にしても、患者の命を助けることを第一に考える。これは当然だが、それが本当に本人、家族の望みと合致しているかも考えないといけない。私どもの地域では、独居老人を日ごろから診ているかかりつけの医師が、地域の病院に「この独居老人の状態はこうこうで、状態が急変しても、最期は何もしてほしくないと本人は希望している」といった情報を渡し、状態が急変した場合に対応した医師が、患者の希望を知ることができる仕組みをつくっている医師会もある。

 こうした取り組みを周知し、全国で同じようなことができるようにしていきたい。急には難しいと思うが、日本医師会として努力したい

日本医師会 会長 横倉義武 氏
横倉義武 氏
(よこくら よしたけ)

横倉義武(よこくら よしたけ)氏プロフィール
福岡市生まれ。1969年久留米大学医学部卒、同大学医学部第2外科入局、同大学医学部講師などを経て、1997年から医療法人弘恵会ヨコクラ病院理事長。医師会活動は、2002年福岡県医師会副会長、06年同副会長、10年日本医師会副会長を経て2012年4月から現職。1999-2002年中央社会保険医療協議会委員も。

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