コラム - ハイライト -

東アジアで新たな研究協力の形を

総合科学技術会議 議員 白石 隆 氏

掲載日:2009年11月11日

シンポジウム「わたしたちの未来を拓くサイエンス-地球・くらし・いのち」(2009年11月3日、内閣府主催)パネルディスカッションから

総合科学技術会議 議員 白石 隆 氏

白石 隆 氏

 

先日、オランダから「イノベーションコミュニティ」の一行が来日した。公式の場ではなかったが、非公式の場で言われた。「日本はイノベーティブな国であるのに、どうして経済成長は駄目なのか」と。

日本は戦後50年、経済大国だった。しかし、今年ないし来年にはGDP(国内総生産)で中国が日本を追い抜いて世界第2の経済大国になる。購買力では既に日本を追い抜いている。世界がこのような大きな転換期にある時、日本をどういう国にしていくかを考えると、やはり科学技術が非常に重要なファクターになってくる。ただし科学技術創造立国でよいかといえば、イノベーションという言葉をつけないといけないと思う。環境、エネルギーの制約の中で難しい課題にこたえられる国になるには何を考えなければならないか。それには3点あると思う。

一つは人材だ。日本の大学や国の研究機関をもっと世界に開かれたものにしていく必要がある。国立大学の教員に占める外国人の比率は3%以下だ。日本の大学や研究開発システムはかなりオープンにできる部分がまだある。ただし、外国人の数を増やすことが目的ではない。世界のトップクラスの人をどうやって持ってくるかが重要だ。

二つ目は、文理融合である。米国のビジネススクールにいて痛感したことは、エンジニアリングや医学のバックグラウンドがある人がビジネススクールに入ってくることだ。例えばマサチューセッツ工科大学(MIT)のスローン・スクール・オブ・マネージメントなどは半数以上がエンジニアリングのバックグラウンドを持つ人たちがビジネススクールに入ってきている。エンジニアリングとビジネススクールの両方のマスター(修士)が取れるプログラムも始まっている。そういう意味で教育の場でも、もっとフォーカスした(焦点を合わせた)文理融合があるのではないか。

3番目が、科学技術外交である。国際協力機構(JICA)と科学技術振興機構が発展途上国と進めている研究協力は重要なプログラムだと思う。ただ、これまで日本の科学技術外交は先進国と発展途上国との協力にはっきり分かれてしまっている。東アジアの場合、中国、韓国、シンガポールといった国は途上国ではなくなっており、日本と同じようにお金を出してやれる分野が拡大している。

特に、現政権が東アジア共同体構想を打ち出している今、もう少し科学技術協力のやり方を考えるべき時代ではないだろうか。

総合科学技術会議 議員 白石 隆 氏
白石 隆 氏
(しらいし たかし)

白石隆(しらいし たかし)氏のプロフィール
愛媛県生まれ。愛光高校卒、1972年東京大学教養学部卒、74年東京大学大学院修士課程修了、77年米コーネル大学大学院博士課程修了、東京大学教養学部教養学科国際関係論助教授、86年コーネル大学Ph.D取得、同大学アジア研究学科・歴史学科助教授、同東南アジア・プログラム副所長、同アジア研究学科・歴史学科准教授、教授を務める。96年京都大学東南アジア研究センター教授、2005年政策研究大学院大学教授・副学長。09年1月総合科学技術会議議員(非常勤)、同年4月から現職。政治学者。専門は、東南アジア地域研究。著書に「帝国とその限界―アメリカ・東アジア・日本」(NTT出版)、「インドネシアから考える―政治の分析」(弘文堂)、「海の帝国―アジアをどう考えるか」(中公新書)など。

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