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失敗許されないコペンハーゲン会議(イボ・デブア 氏 / 国連気候変動枠組み条約事務局長)

2009.02.27

イボ・デブア 氏 / 国連気候変動枠組み条約事務局長

記者会見(2009年2月13日、日本記者クラブ主催)から

国連気候変動枠組み条約事務局長 イボ・デブア 氏
イボ・デブア 氏

 気候変動に対する長期的な国際的取り組みについて合意を目指すコペンハーゲンの国連気候変動枠組み条約締約国会議(注)まで、残り296日となった。今年はそのための本格的交渉の年だ。1年というのは長い時間ではない。気候変動に対して野心的で包括的な対策をまとめるためには政治的に本当に必要な要素に焦点を絞ることが必要だ。

 まず第一に必要なことは、先進国が野心的な温室効果ガスの排出量削減目標を採択することであり、その目標は科学者が必要だと言っている削減を実現するものでなければならない。第2は、開発途上国、特に主要な経済国が排出量の伸びを抑えるために何ができるかを明確にしなければならない。第3に安定かつ予測可能な国際的なファイナンスを確保することが必要。それによって途上国が排出量を抑制して気候変動の影響に適応することを可能にしなければならない。途上国が経済成長を遂げて、貧困の削減を関心事にできるようにしなければならない。

 4番目に必要な政治的要素は、ファイナンスについてのマネジメント、ガバナンスのシステムであり、ファイナンスが効果的に使われるシステムだ。途上国も平等な発言権を持たなければならない。

 これら4つの要素の進展については意を強くする状況になっている。ほとんどすべての先進国が既に第一段の排出量削減目標を発表済みだ。日本も6月に発表すると予想している。途上国についても、既に中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカその他の国々が国ベースの気候変動戦略を立案済みであり、現在、どうしたら対策を立てられるか模索中だ。ファイナンスについても各国からクリエイティブなアイデアが出されている。

 気候変動に関する国際交渉のプロセスが他の課題と同様、国際金融危機によって影響を受けているのは事実だ。しかし、私は2週間前にダボスで開かれた世界経済フォーラムに出席して意を強くした。多数の首脳、経済界のリーダーの方々が、気候変動に対するチャレンジに対して明確、かつ予測可能で野心的な政策が必要だと言っている。欧州、米国、中国で発表されている景気対策の中に、クリーンエネルギー、気候変動対策が大変色濃く盛り込まれている。日本も麻生首相が、グリーン・ニューディールを検討していると伝えられている。

 とはいえ、コペンハーゲンの会議で包括的で野心的な合意に達するまでの交渉は生易しいことではない、と言わざるを得ない。国連事務総長は、気候変動対策がもっと高い政治レベルでサポートされるよう首脳会議を計画中だ。

 科学者たちが言うように具体的な排出量のトレンドを変えて、世界経済成長の性格を変えるために残されている時間的な余裕はごくごく限られたものでしかない。コペンハーゲンの会議はまさに失敗が許されない会議だ。

 (注) 京都議定書は、2012年末までに温暖化防止のため各国が取り組む温室効果ガス削減目標を定めている。それ以後の新たな枠組みについては、2009年末にデンマーク・コペンハーゲンの条約締約国会議で合意を目指すスケジュールが決まっている。

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