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電気自動車は地球を救えるか(清水 浩 氏 / 慶應義塾大学 環境情報部 教授)

2007.05.30

清水 浩 氏 / 慶應義塾大学 環境情報部 教授

研究報告会「次世代エネルギー最前線」(2007年5月29日、科学技術振興機構 主催)講演から

 アル・ゴア氏の「不都合な真実」の映画と出版、および国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告が、地球温暖化問題への関心に火をつけた。さらに、石油の生産量が次第に頭打ちになり、ついにはピークを迎える時期がそう遠くないとする、いわゆる「ピークオイル説」も至るところで議論がなされるようになっている。

 二酸化炭素の排出を削減する方法としては、エネルギーを太陽から受け、それを一度蓄積して、さらにそのエネルギーを有効に利用するものの選択が重要だと考えている。太陽エネルギーをわれわれの使えるエネルギーにする技術として現実的なものに太陽電池がある。リチウムイオン電池が有効だ。さらにその電力の効果的な使い方として電気自動車の大量普及がある。

 この20数年、8台の電気自動車の開発にかかわってきた。リチウムイオン電池、高性能インバーター、ネオジテツ磁石を利用した永久磁石モーターという、電気自動車にとって3つの重要な技術を取り入れ、「集積台車」という新しい概念の電気自動車を開発した。

 実際にテスト走行で、時速370キロを出せることを確認した。さらに加速性能がよいことで知られる乗用車と比較したところ、最初の2秒間は既存自動車の方が加速性能は上だったが、4秒を超えるところからは電気自動車の方が上回っていた。映像で見ていただければよく分かるように、加速がスムーズという特徴もある。ガソリン自動車の宿命としてエンジンは800回転しかでないため、低速から高速にする場合、必ずギアチェンジをしなければならない。スタート直後、時速50キロになったときにギアをローからセカンドに、時速100キロになったときにオートに必ず切り替えなければならない。これに対し、電気自動車にはそもそもギアチェンジの概念はなく、スムーズな加速が可能になるわけだ。

 電気自動車が普及するには、3つの条件で既存の自動車を上回ることが必要と考えている。加速感、乗り心地、広さだ。このうち加速感では明らかに電気自動車が上回るところまで来たと言える。試作品から製品化、さらに産業化に至るまでには、「デスバレー」や「ダーウィンの海」と称される困難をくぐり抜ける必要はあるが、電気自動車はここまで来たと言うことはできる。

清水浩(しみず ひろし)氏のプロフィール
1975年東北大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学、76年国立公害研究所入所、87年地域計画室長を経て国立環境研究所(国立公害研究所が改組)地域環境研究グループ総合研究官、97年から現職、「高性能電気自動車ルシオール」(1999年、日刊工業新聞)など電気自動車に関する著書多数。

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