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まずは短いフレーズでメッセージを

東北大学 加齢医学研究所 教授 川島隆太 氏

掲載日:2007年4月16日

シンポジウム「科学技術と社会をつなぐ」(2007年4月13日、科学技術政策研究所 主催)パネル討論から

研究者が社会とかかわろうと思った場合、「正しいことをきちんと伝えないと」と考え、剛速球を投げると、一般の人はよけてしまう。結局、学者の独りよがりで終わってしまうことになる。

社会とかかわろうと考えたなら、一般の人が受け取れる球を投げなければならない。複雑なメッセージはよけられてしまうから、単純なメッセージを送って、とりあえず受け取ってもらう。私たちのチームの場合、「脳を鍛える」というのがそれだった。短いフレーズの中にいろいろなメッセージを入れたつもりだ。

一方、ここで矛盾にぶつかる。メッセージが短いために誤解を生む恐れがあるということだ。これを真剣に考える必要がある。どちらをとるか、卵と鶏のような関係といってよい。そこで、ある程度社会に認知されたと思われたら、受け取る球を速くして「単に鍛えるということではない」ということも伝えることをした。

産学連携で世の中にかかわるといっても、われわれの仕事はあくまで基礎研究をすること。お金もうけるのは民間のやることだから、何のためにかかわるかといえば金もうけのためではない。最終的には子供の教育にかかわることだ。

後でつけた理由ではないかと笑われるかもしれないが、ドリルという形で出すことで、家庭の環境を変えるという戦略があった。家で、親がテレビだけ見て笑っている。とんでもないことだ。とにかく親を机に向かわせようということで、われわれが商品にしたゲームも、家族全員の成績が比べられるようにした。家族の会話を生み出すように、と。

われわれ国立大学の教官は、世の中にかかわる義務があると思う。ただし、大学の中には、社会にかかわれるところと、かかわれないところがある。人文科学になると、かかわりにくいところもあるだろう。しかし、大学というところは、霞を食べているような人がたくさんいるから面白いのであって、そうでなければ、専門学校になってしまう。

社会にかかわれるところが、自分の時間の5%あるいは10%を割いても、かかわるべきだというのが、私の哲学だ。

川島隆太(かわしま りゅうた)氏のプロフィール
1959年千葉県生まれ、85年東北大学医学部卒、89年同大学院医学研究科修了(医学博士)、91年スウェーデン・カロリンスカ研究所客員研究員、93年東北大学加齢医学研究所助手、2001年東北大学未来科学技術共同研究所教授、06年から現職。人間の脳の働きを画像として評価する脳機能マッピングの研究から、脳科学の知識と技術を社会へ応用する社会技術研究に取り組む。特に産学連携で商品化した脳を鍛えるゲームで有名。

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