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「ものづくり」から「ことづくり」へ(小林智之 氏 / 宇宙航空研究開発機構・宇宙環境利用センター 主幹開発員)

2007.04.03

小林智之 氏 / 宇宙航空研究開発機構・宇宙環境利用センター 主幹開発員

宇宙ことづくりフォーラム東京講演会(2007年3月30日。宇宙材料フォーラム、宇宙航空研究開発機構 主催)講演から

 米国、ロシア、欧州、日本など16カ国の共同プロジェクトである国際宇宙ステーションに、日本の実験棟「きぼう」が、いよいよ組み立てられる時が到来した。われわれは、国際宇宙ステーションを活用して、特に産業界の新しい製品開発につながる成果の創出に取り組んでいる。優れた基礎研究から具体的な製品応用にいたるまでを、産学連携で実現していこうというものだ。

 そのためには「ことづくり」という発想が大事だと考えている。「例えば産業革命の極めて広範囲に及ぶ社会の変化は『蒸気機関』が直接もたらしたものではなく、この『蒸気機関』によって可能になったもう一つの先例のない発明である『鉄道』である」というピーター・ドラッカーの指摘がある。

 「ことづくり」とは「その性能や役割の可能性を思い切り役に立たせて、社会を改革するもしくは新しい価値を創造するための『仕組み』を創ること」といえる。

 そこで国際宇宙ステーションの産業応用を推進するに当たっては、大変重要な鍵を握っているのが、ネットワークの形成だと考えている。

 現在は大学を拠点として民間企業が集まり、共同研究を結んで成果を出していくネットワークを形成して、技術革新につながる「ものづくり」に取り組んでいる。これからは、「ものづくり」の先にある新しい価値観を先取りして「ことづくり」のきっかけを作り、国際宇宙ステーションの日本実験棟を使った「ものづくり」を通じて臨機応変に対応しながら、新しい価値の創造を実現していくアプローチが必要、と考えている。

 そのために新しいアイデアを考えるいくつかのネットワークを形成・組織化し、そこに例えば地域の特徴ある技術や活動資金がリンクされて、日本の実験棟「きぼう」を活用して成果を創出していくような、さまざまなネットワーク形成と、それらのブリッジングを推進していきたい。

小林智之(こばやし ともゆき)氏のプロフィール
1978年名古屋工業大学工学部機械工学科卒、日本国有鉄道入社、86年宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)入社、96年国際宇宙ステーションの利用促進にかかわる企画・計画管理を担当、2001年主任開発部員(現主幹開発員)、03年産学官連携部連携推進グループ長併任。

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