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大陸生成の謎に迫るか?西之島の最新調査

掲載日:2015年9月8日

小笠原諸島父島西方に位置する西之島では、2013年11月から活発な火山活動が続いている。2015年6月11日から21日の期間、海洋研究開発機構(以下、「JAMSTEC」)、産業技術総合研究所、東京大学地震研究所(以下、「地震研」)の共同研究チームが、西之島から4.5km以上外側の海域において調査を実施した。西之島付近での海上調査は今回で2度目となるが、海底にある溶岩試料を初めて採取するなどの成果を得た。

拡大を続ける西之島は、始め二つの小さな島から、現時点で直径2キロメートルの一つの島に成長している。海底火山を起源とする西之島の噴火と溶岩の生成は、40億年前に海洋から大陸が形成される過程の謎をひも解くカギとなるのでは、と考えられてきた。一般的に、火山島は重くて黒っぽい岩石からなり、大陸は比較的軽くて白っぽい岩石からなる。もし西之島から噴出する溶岩が軽い岩石であれば、そのような軽い岩石でできた火山島が存在し、拡大して、さらにプレート運動により離合集散を繰り返して大陸がつくられたという説を後押しすることになる。また、新しい島の誕生は世界でも数十年に一度のことであることに加えて、海底火山が一度にこれほど大量の溶岩を噴き出し続けることはきわめて珍しい現象であり、その観察は、火山を理解する上でも大きな意義を持つ。

水深3,000メートルから成長した巨大火山

今回、研究チームは、西之島の4.5キロメートル以上外側の海域でJAMSTECの海洋調査船「なつしま」から、深海曳航調査システム「ディープ・トゥ」による溶岩試料の採取、海底面の撮影、 噴火現象の目視観測、海底地形調査、船上に降る火山灰の採取を行った。その結果、採取した溶岩は、かんらん石の結晶を多く含み、マリアナ島弧の海底火山のできたばかりのマグマに似た特徴を持つものであった。また目視観測では、数秒間から数十分の間隔での小規模な噴出と溶岩流出が確認され、火山活動が絶え間なく続いていることが分かった。

深海曵航調査システム「ディープ・トゥ」の着水作業 (画像提供:JAMSTEC)
深海曵航調査システム「ディープ・トゥ」の着水作業 (画像提供:JAMSTEC)
海洋調査船「なつしま」から撮影した西之島  (画像提供:JAMSTEC)
海洋調査船「なつしま」から撮影した西之島 (画像提供:JAMSTEC)

この他、2015年3月1日に計測されて以降、火口の周辺にできた噴出物による円錐形の山、スコリア丘が数メートル~10メートルほど高くなっており、高さは140メートル以上あることも観察された。さらに地形的特徴や赤外線カメラによる画像から、溶岩流が海抜70~80メートルの小火口丘の麓から流出し、南東斜面を流れて島の南岸で海に流れ出ていることが分かった。西之島は水深3,000メートル以上の海底から成長した巨大な成層火山の山頂部である。成層火山は溶岩流と火砕物を交互にいくつも積み重ねて成長していく。西之島における観測結果は、単に島の成長だけではなく、海面下に存在する巨大な成層火山の成長の一端を見せていた。

採取されたかんらん石、輝石、斜長石が含まれる溶岩試料(画像提供:JAMSTEC)
採取されたかんらん石、輝石、斜長石が含まれる溶岩試料 (画像提供:JAMSTEC)
赤外カメラで撮影した西之島。南東からの撮影(左)と、南西からの撮影(右)。海に流出している溶岩流の先端部と火口から、上昇する噴煙の様子が高温部として認められる。 (撮影:前野 深 東京大学地震研)
赤外カメラで撮影した西之島。南東からの撮影(左)と、南西からの撮影(右)。海に流出している溶岩流の先端部と火口から、上昇する噴煙の様子が高温部として認められる。 (撮影:前野 深 東京大学地震研)

“常識では考えられない島”が教えてくれること

今回採取した試料の詳細な分析によって、今後、西之島の噴火を引き起こしているマグマの特徴や、大陸の原料の一部となる安山岩をつくるマグマの生成過程などが明らかになっていくだろう。では、西之島が、海洋での大陸形成を知るヒントとなるのか?

JAMSTECの海洋掘削科学研究開発センター マントル・島弧掘削研究グループリーダー田村芳彦(たむら よしひこ)氏は、「地球のマントルと大陸の間には組成的に大きな隔たりがあります。ところが、西之島は薄い地殻でできている海底火山で、マントルまでの距離が八丈島などより近い島であるにもかかわらず、大陸に近い組成のマグマを噴出する、という常識では考えられない島です。マントルと大陸を結ぶミッシングリンクが必ず西之島の溶岩にあるはずだ、と考えて調査を行いました。西之島および海底に噴出した溶岩を分析・解析することによってミッシングリンクを解き明かしていきたいと思います」と話している。

(サイエンスライター 田端萌子)

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