アーカイブ - サイエンスコミュニケーション - What's on ~インタープリターU.K.訪問記~ -

Natural History Museum ~ ロンドンの科学博物館

日本科学未来館 松島淳一 氏

掲載日:2007年5月18日

このコーナーは、日本科学未来館のインタープリターが、ブリティッシュ・カウンシルの支援(*)でイギリス(U.K.)を訪れたときの体験談をご紹介しています。「サイエンス」や「コミュニケーション」をキーワードとする出会いや発見を、インタープリター自身が5回シリーズでレポートしました。

※日本科学未来館インタープリター:日本科学未来館の展示フロアで来館者と対話し、科学をわかりやすく伝え、ともに考える展示解説員としての役割を担うとともに、先端科学技術の動向のリサーチや、館内外での科学にかかわるさまざまなイベントの企画を行っています。また、展示フロアで日々接する来館者やイベント参加者との対話をもとに、科学技術に対する社会の評価や意見を研究者にフィードバックする役割も果たしています。

松島淳一 氏

松島淳一 氏

「科学館」と聞くとみなさんはどのようなイメージをもつでしょうか。学生時代に校外学習で訪れた方もいるでしょうし、星が好きな人はプラネタリウムの上映を思い出すかもしれません。「お勉強」というイメージが強く退屈な印象しか無い方は、ロンドンの科学館を訪れてみるとその印象が変わると思います。

ロンドンには世界的に有名な美術館や博物館がありますが、なかでもNatural History Museumは科学系の博物館として有名で、さまざまな標本が充実しています。標本が充実と聞いて、きっと退屈なところだろうと想像していましたが、実際はその逆でした。

壮麗なNatural History Museumの建物
壮麗なNatural History Museumの建物

Natural History Museumは、日本の科学館と比べると非常に大きな施設で、全部を一日で見てまわるのはまず無理でしょう。展示物のなかには、地球上ではすでに絶滅してしまった動物のはく製や恐竜の化石など、日本ではなかなかお目にかかれないものも多数あります。建物そのものも美しく、見ていて飽きないのですが、個人的に面白かったのは鉱物を展示しているEarth’s Treasuryのコーナー。薄暗い展示室の中で照明に照らされた金・銀・宝石たちを見ていると、まるで宝石店にいるような錯覚に陥ります。同じダイヤモンドでも、じっくりと見比べると微妙な色あいの違いを発見できます。石一つ一つにも個性があることに気がつきました。たとえ英語の説明文が読めなかったとしても、美しい鉱物を見ているだけで楽しくなりますし、「これを全部お金に換算するといくら?」なんて考えてしまいます。

宝石たち。さて全部でおいくら万円?
宝石たち。さて全部でおいくら万円?

また、一階のHuman Biologyのコーナーでは、私たち人間そのものがテーマです。人間のからだが動く仕組みを知り、また錯覚を通して視覚の不思議を感じることができますが、「赤ちゃんはどこからくるの?」といった子供が抱くような疑問にも答えてくれます。赤ちゃんがお母さんのおなかの中から出てくるときの様子をそのまんま絵にした解説パネルを見ると、赤ちゃんが頭の形を変えながらも狭い産道を通っている様子わかります。さらに陣痛から出産までの赤ちゃんの体の動きを見ていると、決して僕は味わうことのできない出産の痛みを想像してしまいます。また、子宮の中の音を聞きながら大きさ2メートルはあろうかという巨大な胎児の模型を見ていると、自分が子宮の中にいる気分を味わえました。ちなみに、赤ちゃんが生まれるきっかけの様子もしっかり押さえてあります。男女の体の各部名称も明記してあり、ストレートな表現で説明している模型でした。

子宮の部屋では大きさ2mの胎児が出迎えてくれます。
子宮の部屋では大きさ2mの胎児が出迎えてくれます。

分かりやすい出産の様子です。痛そう・・・。
分かりやすい出産の様子です。痛そう・・・。

そのまんまです・・・。
そのまんまです・・・。
こうやって自分の印象に残った展示を振り返ると、自分の欲望を再認識しているようです。しかし一方で、自分が科学に興味を持つきっかけとなった、子供のころに感じた「自然界の不思議」を忘れかけていることに気がつきました。母親のお腹の中の赤ちゃんはどうやって外に出てくるのか?暗い地面の下になぜ美しい宝石があるのか?

未来館では研究者の方に直接お会いできる機会に恵まれていますが、最新の科学ニュースばかりを追いかけていると、「そもそもなぜ自分が科学に興味を持ったのか?」ということを忘れてしまいそうになります。科学コミュニケーターとして、学生や子供たちに科学の魅力を人に伝えるには、自分がかつて感じたその魅力を忘れてはならない。当たり前のようですが、あらためて気がついたイギリスでの経験でした。

 

松島淳一 氏
松島淳一 氏
(まつしま じゅんいち)

松島淳一(まつしま じゅんいち) 氏 プロフィール

大学院終了後、一般企業を経て2005年から日本科学未来館に勤務。イギリスの科学館で感じた「またぜひ来たい!!」と気持ちを、未来館の来館者にも味わってもらえるよう努力中。

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