アーカイブ - サイエンスコミュニケーション - What's on ~インタープリターU.K.訪問記~ -

サイエンスなし!?のサイエンスイベントで感じた『イギリス人のサイエンス』

日本科学未来館 米原遊 氏

掲載日:2007年5月7日

このコーナーは、日本科学未来館のインタープリターが、ブリティッシュ・カウンシルの支援(*)でイギリス(U.K.)を訪れたときの体験談をご紹介しています。「サイエンス」や「コミュニケーション」をキーワードとする出会いや発見を、インタープリター自身が5回シリーズでレポートしました。

※日本科学未来館インタープリター:日本科学未来館の展示フロアで来館者と対話し、科学をわかりやすく伝え、ともに考える展示解説員としての役割を担うとともに、先端科学技術の動向のリサーチや、館内外での科学にかかわるさまざまなイベントの企画を行っています。また、展示フロアで日々接する来館者やイベント参加者との対話をもとに、科学技術に対する社会の評価や意見を研究者にフィードバックする役割も果たしています。

米原遊 氏

米原遊 氏

イギリス人の好きなもの、何を思い浮かべますか?紅茶、サッカー、フィッシュアンドチップス・・・色々あると思います。今回の視察で私が強く感じたもの、それが「ガーデニング」です。スーパーにはガーデニングコーナーがあり、お洒落な雑貨屋さんには可愛いジョウロ、長靴などが並んでいます。そして毎日のようにテレビではガーデニング番組が流れています。それは「お庭改造計画」のようなものから「私のお庭自慢」のようなものまで。とにかくイギリス人はガーデニングが大好きなのです。

今回の視察で私はロンドンからニューカッスルを電車で往復しました。その途中、外の風景を眺めていたのですが、確かに一戸建ての家には必ず庭があります。そしてそれぞれの家が個性豊かな庭を持っているのです。

Newcastleの街並み。大きな7つの橋が架かる街です。
Newcastleの街並み。大きな7つの橋が架かる街です。

ニューカッスルはイングランド北部最大の都市です。街の中心部には大きなショッピングセンター、そして週末は多くの若者でにぎわっていました。しかし中心から電車で1駅離れると、豊かな自然が広がっています。

Newcastle中心から少し離れると緑がたくさんあります。
Newcastle中心から少し離れると緑がたくさんあります。

Newcastle Science Festivalのポスター。キャラクターは蜂。
Newcastle Science Festivalのポスター。キャラクターは蜂。
今回のサイエンスフェスティバルにも、ネイチャーウォークやバードウォッチングツアーなどの、自然と触れ合うものや環境問題を扱うイベントが多くありました。私が参加した「The Science of Wildlife Gardening」もその中のひとつです。ホームページにはガーデニングから環境問題を考える、とありました。前日にも環境変化がワインの生産に影響を与えている、といった内容のイベントに参加したので、「きっと環境破壊が野鳥の生態に影響を与えているのね」と、勝手に想像しつつ「The Science of Wildlife Gardening」に参加しました。

司会はBBC ラジオで長年番組制作をしてきたMarian Fosterさん。そしてパネリストにはダラム大学のDr Phil Gates、シェフィールド大学のDr Ken Thompson、RSPBという野鳥愛護団体からの男性。参加者は50人ほどで年齢層は少し高めです。イベントの話の内容は「野鳥の好きな食べ物」「野鳥が寄ってきやすい鳥箱作り」など。あら?環境問題は?自然が破壊されていて野鳥が困っているんでしょ?サイエンスはどこ?私の予想は外れ、そして「可愛いだろう」と言いながら野鳥の写真を次々に見せるパネリストの方々。結局45分間のトーク中、環境問題が議論されることはありませんでした。

その後は質問タイム。

  • (参加者)「親が残してくれた荒れ放題の庭を野鳥が寄ってくるようにするにはどうしたらいい?」
  • (パネリスト)「まず余計な草を抜くことから始めてみよう」
  • (参加者)「庭に落ちているコンカー(トチの実)が多すぎて拾いきれないの」
  • (パネリスト)「リスが喜んでいるよ」
まるで「お庭お悩み相談所」のようになり、時間を過ぎても質問は一向に終わりません。

ついに「サイエンスらしさ」を見つけることなくイベントは終わってしまった。・・・かのように見えました。しかし会場を出るとたくさんの参加者が何かを書いています。それは野鳥愛護団体への参加シート。そして皆がこぞって募金をしていました。そこでようやく私はこのイベントの意味が分かったのです。きっとイギリス人にとって自然はとても身近なものなのでしょう。毎日庭を手入れし、鳥やリスを見て過ごしている。当たり前に自然を大切にすることを感じているのです。だからあえて難しく環境問題を取り上げなくても良かったのでしょう。ちゃんと「自然を大事にしよう」というメッセージは伝わっていたのです。私は「サイエンスをすること」は「少し難しく考えてみること」だとどこかで思っていました。でもそんなことをしなくても、それぞれがメッセージを受け取り、行動に移してくれる、そう感じたのです。

イベント後に配られた「お花の種」
イベント後に配られた「お花の種」

サイエンスは身近なところにあり、そして身構えずサイエンスをする。それって一番大事なことなのかも。それを学んだ私はこれから日本でどうしよう。日本人に身近なもの・・・まずは盆栽?お茶?

だめだめ。構えず、そして「自然」体で、考えていこうと思います。みなさんも身近なもの、例えば目の前の「朝買ったお茶」に目を向けてみてくださいね。そこにも「サイエンス」がちゃんとありますよ!

 

米原遊 氏
米原遊 氏
(よねはら ゆう)

米原遊(よねはら ゆう) 氏 プロフィール

大学院在学中の2005年から日本科学未来館のインタープリターとして勤務。現在は5階「地球環境とフロンティア」「生命の科学と人間」フロアにて、日々来館者に科学の楽しさを伝えようと奮闘中。

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