アーカイブ - サイエンスコミュニケーション - 途上国の理科教育、科学技術水準の現状と課題 -

第2回「丸暗記よりも『考える』授業を心がけて」

国際協力機構 青年海外協力隊事務局 理数科教師(ガーナ) 島津英樹 氏

掲載日:2008年7月25日

このコーナーでは、途上国の科学技術の水準や、理科教育における現状および今後の課題について、青年海外協力隊に理科教師として参加した4人の体験談も交えながら、6回シリーズでご紹介しています。なお、青年海外協力隊事業は、「開発途上地域の住民を対象として当該開発途上地域の経済および社会の発展または復興に協力することを目的とする国民などの協力活動を促進し、および助長する」ことを目的に、国際協力機構(JICA)によって実施されています。

協力隊員4代目の高等技術学校で

板書する島津氏
板書する島津氏
私は、ガーナ東部に位置するボルタ州のツィトというところで活動しています。この町には3つの中学校、2つの高校、2つのカレッジ、インターナショナルスクールと、多くの学校が集まって学園都市のようになっています。これは多分、首都のアクラとボルタ州の州都のホを結ぶ主要道路が通り、交通の便がいいからだと思います。

私の配属先、ツィト高等技術学校はこの町のはずれにあり、生徒数は約700人とかなり大きな学校です。1991年に設立された公立学校で、今までにも3人の隊員が活動してきました。そのためか生徒や先生は私を普通に受け入れてくれて、最初から活動しやすい環境でした。町に出ればたまに前任者の名前で呼ばれることもありましたが、今ではたいていミスター・キデキと呼ばれます(ヒの発音はガーナ人には難しいらしい)。

多分ガーナのどの学校でもそうだと思いますが、生徒は非常にフレンドリーで、先生の手伝いをよくします。教室に向かう時に教科書やチョークを代わりに持ってくれたり、水が無い時には重いバケツを頭にうまくのせて運んでくれます。私の家は学校の敷地内にあるため、家にもよく来てくれてガーナ食を作ってくれます。私がたまにお好み焼きとかラーメンを作っても、あまり好きではないようで全部食べたのは私一人だけでした(料理がまずかっただけかも)。

校長先生はしっかりした人で、たとえば先生が授業をサボったり遅れたりすると直接注意しているため、授業はだいたい時間どおりに行われています。着任当初は、同僚の授業を見学させてもらっていました。授業は英語で行われますが、ガーナ人の英語はかなりくせがあり、生徒の発音を聞きとることさえむずしかったです。そこで、ガーナ人の先生がしゃべる英語を参考にして、半年経ったころから私もガーナ英語を意識してしゃべっていました。たとえば千をサウザンドではなくタウザンドと発音したら、分かってくれます。授業以外では現地語であいさつなどを覚えてコミュニケーションをとっています。簡単な現地語を話すだけでも生徒は喜んでくれます。

 

丸暗記だけはさせたくない

授業のまとめとして、化学反応の速さの違いを生徒たちにみせているところ
授業のまとめとして、化学反応の速さの違いを生徒たちにみせているところ
私はこの学校で化学を教えています。前述したように生徒は本当にフレンドリーでそれは授業中でも変わりません。質問するとまったく恥ずかしがることなく、間違った答えでも構わずに答えてくれるので楽しく授業をすることができます。ガーナには日本のセンター試験のような統一試験があり、卒業する時に全生徒が受けなければなりません。この成績によって大学に行けたり就職に有利だったりするので、生徒はこの試験でいい成績が取れるように勉強しています。

このため、ガーナでも日本のように試験が中心になり、教科書を丸暗記するという勉強の仕方をしています。私は丸暗記だけの授業はしたくないので、できるだけ生徒に考えさせる授業を心がけています。たとえば気体の公式などを説明する時には、実際にその式が表す現象を、風船などを使って生徒に見せています。

今年4月の長期休暇中には、隊員が活動している学校を回って実験を見せて回るツアーを同期隊員が企画し、私も参加しました。実験は熱気球やペットボトルロケット、エアーキャノンといった、簡単で面白く、誰でも手に入る材料を使ったものを選びました。これは生徒に興味を持たせ、自分でもやろうという気を起こさせるためです。実験を見る生徒の目は好奇心にあふれていて、表情は本当に楽しそうでした。熱気球が上がった時、ロケットが100メートル近く飛んだ時、エアーキャノンでろうそくの火を消せた時には、みんな「エイッ」と言ってすごい反応でした。やっている自分たちも「楽しくやってよかったなあ」と思い、実験の重要性が分かりました。

ただ、ガーナの理数科教師隊員は大学卒業後すぐに参加した人が多くて実験の知識が少ないため、みんなで協力して実験集の冊子を作成し、配りました。これを見れば任地で各隊員が簡単な実験をできるようになっています。

国際協力機構 青年海外協力隊 協力隊レポートより転載

 

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