アーカイブ - レポート - 江戸時代からの古き技術と現代のロボット研究『からくり人形とロボット』

第3回「庶民の中のからくり人形」

国立科学博物館 主任研究官 鈴木一義 氏/千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田貴之 氏

掲載日:2006年6月21日

西洋でも、優れた技術者達がたくさんのオートマタを作っている。そしてそれらの多くは、一部の貴族や上流階級のために作られたものである。

たいして日本のからくりは、貴族や大名らだけでなく、大衆芸能であるからくり芝居や茶運び人形のような商品、山車からくり等として、一般の庶民をも楽しませるために作られたものだ。

「弓曳童子」というからくり人形は、12ヶ所の稼働部分がゼンマイ動力により6枚のカムと紐引きで動く、からくり人形である。簡単な構造だが、童子は矢台にある4本の矢を次々に弓へとつがえ、的にねらいを定めて放つ。

弓曳き童子(久留米市教育委員会 所蔵)
弓曳き童子(久留米市教育委員会 所蔵)

矢を10数mも飛ばす仕掛けにも驚くが、人形自体の発想に日本独自のものがあることにも気づかされる。矢が的に当たらない、失敗することがあるのだ。もしこのからくりが、貴族や大名らに見せたものなら、失敗することは失礼であり、製作者としては不名誉になる。

しかし、庶民が見る見世物用のからくりは、観客を飽きさせずに興行しなければならない。失敗は重要な演出だったと考えられるのである。また人形の感情を微妙なしぐさで表す能面のような人形の顔は、失敗すると残念そうに見え、当たると嬉しそうに見える。

失敗をしたり感情を表現できるからくり人形を楽しむ社会が、数百年前から続いていることは、世界が奇異に感じるほど盛んにペット型ロボットや人間型ロボットの開発が行われている、ロボット大国日本の現状を理解する鍵となるだろう。

「弓曳き童子」
50.0 W 30.0 D 30.0(cm)
矢台に並ぶ矢を弓へとつがえ、的に向かって次々と射る様子。(13,607KB)
(再生時間:1分46秒)

 

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国立科学博物館 主任研究官 富田京一 氏
鈴木一義 氏
(すずき かずよし)

鈴木一義(すずき かずよし) 氏のプロフィール
専門は科学技術史で、日本における科学、技術の発展過程の状況を調査、研究をしている。特に江戸時代から現代にかけての科学、技術の状況を実証的な見地で、調査、研究をしている。
これまでに、経済産業省「伝統の技研究会」委員、大阪こどもの城、トヨタ産業記念館、江戸東京博物館、その他博物館の構想委員や展示監修委員などを歴任。

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田貴之 氏
古田貴之 氏
(ふるた たかゆき)

古田貴之(ふるた たかゆき) 氏のプロフィール
独立行政法人 科学技術振興機構 北野共生システムプロジェクトのロボット開発グループリーダーとしてヒューマノイドロボットの開発に従事。2003年6月より千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長。2002年にヒューマノイドロボット「morph3」、2003年に自動車技術とロボット技術を融合させた「ハルキゲニア01」を開発。

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