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プラザ・サテライトのこれから

科学技術振興機構 産学連携事業本部 担当 小原満穂 審議役

掲載日:2009年3月27日

小原満穂 審議役(科学技術振興機構 産学連携事業本部 担当)

小原満穂 審議役(科学技術振興機構 産学連携事業本部 担当)

 

激務こなす館長が個性担う 県を越えた連携模索を

JSTの地域イノベーション創出総合支援事業では、全国16カ所のJSTイノベーションプラザ・サテライトを拠点に、大学や自治体等と連携をしながら、新規事業の創出、技術革新による経済活性化を目指して、地域の産学官交流、研究成果の育成、諸事業との連携を進める。各プラザ・サテライトの事業目的は同じだが、実際の活動内容はそれぞれに個性的なものだ。今回の連載取材では、産学連携に熱心な研究者の数、大学や研究機関の体制、熱心な自治体かどうか、地元企業の規模や数など、それぞれの地域の実情を踏まえながら、館長がその個性を発揮することで各館の特徴を作り出していることが分かってきた。多様で奥の深い地域事業をこれからどう展開していくのか、事業を総括している小原満穂・審議役にお話を伺った。

 

- 地域が多様な中で、どういう方針で地域事業を進めているのか

各プラザ・サテライトについては、本部の方針というよりも、それぞれの裁量に任せている。もちろん、JST中期計画、予算や人的な面で最低限の条件はあるが、自ら年度事業計画を作りどのように運営していくのかは自由というのが原則。また、自治体や大学等との連携は必要条件であり、そうした連携を進めながら運営をしていくとなると、本部から「ああやれ、こうやれ」といっても難しい面もあるため、一定の枠はあるけれども、あとは自由に運営している。

 

- 各館とも個性的な館長が運営を担っているが、そうした人物を選ぶ方法は

平成13年にプラザが5館開館したのだが、その時から、誰を館長に選ぶのかは大きな課題となっている。企業との付き合いや共同研究など、実際に産学連携の経験があるのが必須条件。大学や自治体から複数推薦していただき、候補者と意見交換をして選んできた。地元の産業に対して大学の研究成果をどう渡すかという点はもちろん、本人の熱意やビジョンを重要視している。

 

- 各館長とも非常に忙しそうだが

発足当時は、育成研究とコーディネート活動、各機関との連携、研究交流、講習会・研修会などが中心だったが、その後、シーズ発掘試験、地域ニーズ即応型、地域研究開発資源活用型とかなり業務は増えている。各館長はこれらの募集、選定、進捗管理、評価と本当に大変だと思う。

特にシーズ発掘試験は、JST事業の大きなヒット商品。地方大学に好評で、件数も多く、倍率も高い。その中から本当に良いシーズを見つけるため、外部の査読委員の支援を受けて評価をしているが、最後はプログラム・オフィサー(PO)である館長が責任をもって決めている。

 

- 多くのプログラムがあるが

シーズ発掘試験→育成研究→研究開発資源活用型という形で、各ステージごとに評価しながら実用化までつなげていく仕組みになり、一応シームレスになった。ただ、採択件数から見れば細いところと太いところがある。育成研究は各プラザ・サテライトごとに2課題では少ないという声も強いため、来年から増やすことも考えている。

研究開発資源活用型は、育成研究でシーズを3年育成しただけでは、なかなか実用化まで行かないため設けたもの。育成研究で作った研究室レベルでのプロトタイプを実機レベルのプロトタイプまで持って行くためのステージ。育成研究は大学の先生が中心となるが、研究開発資源活用型は企業が中心になって進めるもので、JSTと大学・企業とが同額を負担するマッチング・ファンド方式になっている。

地域ニーズ即応型は今年から始めた新たなプログラム。中小企業は大学のシーズを上手に育てていくという時間のかかる開発には耐えきれないことが多いため、むしろ抱えている技術的問題(ニーズ)を公設試などの研究成果(シーズ)を活用して解決することを狙っている。例えば、寿命の長い金型作りや真円度の高い深い孔を開けたいといったニーズに対して、公設試の力を借りて解決すれば、それは中小企業としてはコストダウンや付加価値の面で大きなブレークスルー。

また公設試は、地域にある中小企業のニーズを一番良く知っている。そこを開発の面から支援することで「公設試さんのおかげで開発できました、新しい製品が作れました、コストダウンできました」といったことになり、公設試の活性化にもつながる。

 

- 特定の県からは応募が少ないようだが

外部資金を受け入れる際、補正予算を組まなければならないため、県として大変だというのがあったのではないか。今回の採択結果を見て、隣の県ができるのであれば我が県もというように変わっていけば良い。1年間500万円で最大2年間1000万円の支援は中小企業としては大きなお金であり、そして公設試の技術的なバックアップを受けられるため、技術的課題が試作品段階までいくのではないかと期待している。

 

- 今年度から研究開発は直轄方式から大学等への委託になったが

狙いとしては、最大30%の間接経費による各大学への支援と組織に対するインセンティブを高めることだ。委託方式になっても、ことあるごとに館長やコーディネータが大学と連携しながら進捗管理や評価をし、何かあったら一緒に対応していくことになる。

 

- 今後のプラザ・サテライトについて

やはり地域の科学技術駆動型イノベーションの拠点として、どう特色を持つのか。大学は地域共同研究センターなど産学連携の拠点を持っており、それらと連携をとりながら、JSTならではの特色を出していかなければならない。

プラザ・サテライトの強みは、大学のみならず自治体や財団、企業と色々なところと付き合いがあり、大学や公設試、中小企業をトータルで支援できるということと、そして地域間連携が可能だということだ。やはり、ある大学とその県内にある企業の限定されたマッチングというのはなかなか難しい。

我々の経験から、マッチング率はトータルで20~25%くらいになる。さらに地域に限ったら、その比率はさらに低くなる。やはり県を越えた連携を模索していかなければならない。それができるのが、プラザ・サテライト。

研究開発資源活用型でも、宮崎県、鹿児島県、大分県、沖縄県の各大学が連携したATL(成人T細胞白血病)のプロジェクトが採択されている。こうした県を越えたプロジェクトがプラザ・サテライトの得意分野。

JSTが主催している新技術説明会などで、地方大学のシーズを東京など大都市圏の企業につなぐというのも大きな役割であり、大学や自治体のコーディネータとの大きな違いはそこにある。地方での活躍に加えて、県を越えたマッチングが必要になってくる。

また、プラザ・サテライトを科学技術理解増進活動の地域の拠点にしていこうとも考えている。既に各プラザ・サテライトが独自にサイエンス・カフェなどを行っているが、今後はさらにJST本部事業との連携、自治体や大学等との連携を進めてもらいたい。

 

- コーディネータが重要になる

全国のコーディネータが集まる全国イノベーションコーディネータフォーラムを毎年開いている。そこで意見交換、情報交換、情報共有をすることが大切で、より積極的に進めていこうとしている。

JSTだけでなく、大学や自治体関係のコーディネータが参加しているが、他府省のコーディネータにも積極的に参加を呼びかけていきたい。

また、コーディネータは地方においてかなり活躍しているが、自分の成果をアピールする機会がない。そこで活動を奨励し成果をアピールする機会として、来年2月に金沢で開催する全国イノベーションコーディネータフォーラムでコーディネータ大賞(仮称)を設け、非常に優れたコーディネート能力を発揮し、実績をあげた方を表彰する制度を検討している。

 

- 若いコーディネータを育てるには

育てる前に本当に優れた若いコーディネータがこの分野に入ってくるためには、まずパーマネントの雇用が必要ではないか。5年や3年の期限付きの雇用では、腰を落ち着けて人間関係を作りながら産と学を結びつけ実績を出すのはなかなか難しい。地域でそれなりに名を成したころには期限がきてしまう。何らかの解決策が必要だが、今の雇用システムでは解決策がないのが現状だ。

 

地道な努力が日本を変える

プラザ・サテライトには、地域の産学官連携や科学技術理解増進の拠点として様々な機能が求められているが、一番大事なことは小原審議役がインタビューの最後に話した「JSTのプラザ・サテライトがあって本当に良いね、と言われるような拠点にしていきたい」との一言に尽きるだろう。

「仏作って魂入れず」という諺があるが、制度や予算といった「仏」に魂を入れていくのは、各プラザ・サテライトの館長をはじめとするスタッフたちだ。川や山を越えただけで住民の意識や文化が異なる“地域”の中で、イノベーションの流れを作っていくというのは非常に難しい作業だ。これまでのインタビューで、スタッフ1人ひとりが足と頭を使って努力しており、それぞれに異なる段階ではあるが、その成果が生まれつつあることが分かってきた。

こうした地域科学技術の振興は、成果が見えにくいため、政策的な批判を受けることも多い。しかし、こうした地道な努力を重ねない限り、科学技術創造立国が本当の意味で国是になることはない。今後、地域から世界を変えていくイノベーションが生まれ、日本という国を変えていくことが期待される。

(科学新聞 2008年9月19日号より)

 

小原満穂 審議役
小原満穂 氏
(おばら みちお)

小原満穂(おばら みちお)氏のプロフィール
昭和23年岩手県北上市生まれ。昭和49年関東学院大学工学部機械工学科を卒業後、日本科学技術情報センター(JICST)に入社。文献情報部、電子計算機システムセンター、企画室等を経て、科学技術振興機構(JST)(科学技術振興事業団)では、知的所有権戦略室長、地域事業推進部長を歴任し、平成17年10月から現職。趣味は、読書、ドライブとスーパー銭湯巡り、(妻との)ショッピング。

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