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オフィスの仲間、連絡は密 香川との連携も深めたい

JSTイノベーションサテライト徳島 館長 今枝正夫 氏

掲載日:2009年3月6日

今枝正夫 氏(JSTイノベーションサテライト徳島 館長)

今枝正夫 氏(JSTイノベーションサテライト徳島 館長)

 

JSTイノベーションサテライト徳島は徳島大学のキャンパス内にオフィスが設けられていて、立地条件が極めてよいといえます。徳島市内にあるので、我々スタッフが活動するのに非常に便利だし、外部から足を運んでくださる方々にとってもアクセスがとてもいいんです。それから私が徳島大工学部で仕事をしていた関係で、コーディネータ活動も円滑に進んでいます。サテライト徳島は徳島県と香川県を活動の拠点としており、香川大においても、副学長の角田先生(運営委員)、農学部長の田島先生に非常に協力的に対応していただいています。また、高専との関係も良好で、ことに阿南高専校長の小松先生はよくご理解くださっています。

サテライトには色々な事業がありますが、JST本部から押し付けられての仕事という感覚はありません。これは非常にありがたいことだと思っています。館長に就任して私自身がこういうオフィスにしたいという構想があり、3つのモットーに沿って皆が活動してくれています。それは、徳島県、香川県の方々、大学や高専、公設試の先生方から信頼されるということ、誠意を持って仕事をすること、国民の税金を使って仕事をさせてもらっているのだから公正性を保つということ、この3つです。

それから私はオフィスの仲間はファミリーだと思っています。毎週月曜日にはウィークリーミーティングを実施してスタッフ間の連絡を密にしており、それには育成研究で雇用されている研究員、技術員も参加、その週の研究の方針や計画を説明してもらっています。研究員もスタッフもファミリーだという感覚で運営しています。育成研究では、各研究担当者と四半期ごとの研究進捗状況会議のほかに、ひと月半ごとに研究打ち合わせを実施しており、研究者にとってもコーディネータにとっても負担は大きいのですが、これによって研究の進み具合が把握できます。

そうしたなかで、注目研究としてあげておきたいのは、初年度(18年度)に採択された育成研究課題で、徳島大院ソシオテクノサイエンス研究部の高麗寛紀教授による「微生物・昆虫のモニタリング法の開発およびオーダーメイドタイプ殺菌・殺虫剤の開発」です。採択研究にはすべて期待はしていますが、研究開始から日が浅いので、まだ公表できる成果は出ていません。しかし今年3月に行った中間評価で高麗プロジェクトは高い評価を受けました。

既存の殺菌・殺虫剤は、標的の菌や昆虫だけでなく、その環境に存在する多くの菌や昆虫までも駆除することになり、環境を破壊する一因となってきました。このプロジェクトでは、これまで集積されてきた菌や昆虫のDNAデータベースを利用して、様々な環境に存在する微生物や昆虫などの種類を同定、さらに菌数・虫数を測定して、そのデータをもとに環境に適した標的特異的な殺菌・殺虫、つまり「オーダーメイド殺菌・殺虫」を可能にする技術および製品を開発します。

また、19年度に育成研究に採択された「窒化ガリウム基板を用いた固定型遷移金属触媒の開発」も注目すべきものです。これは、阿南高専の塚本史郎教授のテーマですが、研究内容もさることながら、大学の応募が多いなかで、高専単独の応募課題が採択されたのは初めてのことであり、全国の高専からも熱い視線を集めていますので、何とか成果を出して実用化できるよう、指導していこうと思いますし、これが励みになって今後他の高専から応募してもらえるのではないかと期待しています。

塚本プロジェクトが目標としているのは次のようなことです。遷移金属触媒を用いた医薬品合成では、生成物と有害な遷移金属触媒とを分離するのに多大な労力を要します。そこで、この研究では、毒性がなく、取り扱いが容易な窒化ガリウムに遷移金属を固定することで、従来の機能性を保ちつつ、分離作業なしで生成物だけを収集可能な触媒を開発することを目指しています。こうした触媒は、リサイクルが可能なため環境にやさしく、医薬品合成の大幅なコスト削減も期待できるわけです。

サテライト徳島では通常業務である研究支援のほか、JSTの事業の一端として、科学技術の理解増進活動も行っています。その1つが年6回のサイエンスカフェの実施です。最初のうちはなかなか高校生が集まってくれなかったのですが、高校に足を運んで努力した結果、3回目くらいからは高校生が半分以上を占めるようになり、定着してきました。今では常客もいるほどです。高校生のほうでも興味を持って参加するようになり、講師に盛んに質問していますね。角田先生にこれを紹介した折、香川大でもやってほしいとの希望がありました。大学に高校生が出入りすることは大切なことだと思いますね。

 

サマー教室のようす
サマー教室のようす

 

もう1つは、地元の発明協会と連携し、科学技術の面白さを伝える企画としてサマー教室を実施しました。小学4年生から6年生までの約30名の子どもが集まって、発明協会の方が色々なものづくりを教えてくださる。さらに、毎年ロボットコンテストに参加している阿南高専にもご協力をお願いして、コンテストに参加したロボットを持ってきていただきました。それを子どもたちの前で動かしたり、子どもたちに操作させたりしたところ、非常に感動していました。後でアンケートをとった結果、ロボットとはこんなに面白いものだった、複雑なものが意外に簡単に操作できた、高専の学生が作れるとは信じられない、さらには自分も阿南高専に入りたいといった回答が得られました。高専の小松校長は、人前でデモンストレーションすることは、緊張する本番に向けてのいいトレーニングになるとおっしゃってくださっています。

地域との連携については、徳島県では「LEDバレイ構想」を掲げ、LED関連企業の集積を狙った施策を展開しており、照明だけではなく、色々な分野に可能性があるLEDの応用を検討している。我々としても、LEDの応用研究も支援し、地域の施策とマッチした研究についても支援しています。また、徳島県は糖尿病の死亡率が14年間連続全国1位というありがたくない記録を持っており、県をあげて1位脱却に取り組んでいます。そこで、今年3月に「地域イノベーションin四国~みんなで知ろう!糖尿病」を開催したところ、約600名という多数の参加がありました。地方のフォーラムとしては画期的な集客を記録できたことは、サテライトと徳島県との連携がよいことを示していると思います。

これまではどちらかというと徳島県よりで、香川県に対して積極的に働きかけてきたとはいえませんでしたが、今年度からは香川県に対し特に力を入れて、商工労働部を経由し、産業技術センターと連携をとりながら、産学官連携を進めていきたいと考えています。香川県は以前から糖類に関する研究のレベルが高く、文科省が知的クラスター事業では、希少糖バイオクラスターを実施していました。現在は糖質バイオクラスター形成事業を立ち上げており、私も外部評価委員を務めています。つい先ごろ香川県が提案していた糖質バイオ研究の事業テーマが文科省の「都市エリア産学官連携促進事業(発展型)」に採択されました。そうした流れも支援していきたいですね。

研究員もスタッフもファミリーであり、仲間だという今枝館長の運営哲学は、サテライトという小規模なオフィスの特色を最大限に発揮するうえで極めて重要であると思われる。毎週全員参加のミーティングはなかなか大変であろうが、コーディネーターが大学や企業に足を運ぶときにも、そうした情報交換の蓄積が役立つことは間違いない。また、年1回の研究成果発表会をサテライト高知と合同で行っているのも、四国ならではといえよう。

(科学新聞 2008年6月13日号より)
    <所在地・問い合わせ>
    JSTイノベーションサテライト徳島
    〒770-8506 徳島市南常三島町2-1(国立大学法人徳島大学 産学官連携プラザ・ベンチャービジネス育成研究室4階)

 

今枝正夫 氏
今枝正夫 氏
(いまえだ まさお)

今枝正夫(いまえだ まさお)氏のプロフィール
名古屋大学大学院工学研究科修了。名古屋大学工学部講師などを経て、88年徳島大学工学部教授。06年定年退官。現在、JSTイノベーションサテライト徳島館長。

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