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寧為鶏口、無為牛後-わが科学者人生に無駄はなし

北海道大学大学院 先端医学講座光生物学分野 教授(前・産業技術総合研究所セルダイナミクス研究グループ長) 近江谷克裕 氏

掲載日:2007年6月22日

近江谷克裕 氏(北海道大学大学院 先端医学講座光生物学分野 教授(前・産業技術総合研究所セルダイナミクス研究グループ長))

近江谷克裕 氏(北海道大学大学院 先端医学講座光生物学分野 教授(前・産業技術総合研究所セルダイナミクス研究グループ長))

 

僕は群馬大学医学研究科で博士課程に進みましたが、修了後の進路について悩み、新しい研究の方向性を模索していたところ、大阪バイオサイエンス研究所(OBI)でポスドクの募集を見つけ、「発光タンパク」という目新しい用語が目に入りました。イメージがはっきりしていて、対象として面白そうであり、しかもだれもやっていない、これは「チャンスだ」と思い応募しました。現在もメインになっている「発光タンパク」の研究は、ここから始めたわけです。30歳の時でした。

OBIではフレデリック辻先生のポスドクとして研究していましたが、独り立ちの時期が近づき、自分自身で課題を選びました。辻先生の専門である海の発光生物以外のものとして、当時は学問として誰も手を出していなかったホタルの発光系が面白いと考えました。だから辻先生には「お手伝いはしますが、自分の独立のことも考えてホタルの発光系をやってみたい」と申し出て、だんだんと独り立ちする準備を整えていました。さきがけ研究制度が始まると聞いたのは、ちょうどこの頃です。

僕にとって、さきがけをやって何が一番よかったかといえば、「挑戦し続ける自分を見ることができた」ことです。もちろん、さきがけのステイタスということもありますが、自分一人で責任を背負い込んで、必死に研究を行い、この段階では思い残すことはないという達成感を得ることができました。そういう自分がいたからこそ、次のステップに向かってやり続けることができたと思っています。

理系分野に進みたいと考えている人には、少数派であることに対して自信をもっていてほしいと思います。皆と同じものを見ていない、隣の人と違ったものを見て、感じていることが面白いのであり、「他人と違う」ことに自信をもってもらいたい。

僕もさきがけで「ホタル」という他人がやっていない研究を行い、それを研究総括の本多健一先生はじめ、周囲の皆さんが認めてくれました。その人のもつ興味を常に伸ばしていけるような大人になりたいし、そういう風に育っていけるような社会にしていければいいなと思います。それができれば、サイエンスは自分の考えたことを自分で実現できる楽しい世界であると思います。

(科学技術振興機構 高木千尋)
  • 「さきがけものがたり-未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台」(アドスリー発行、丸善 販売)から要約転載)

 

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