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写真と絵画のリアリティ―人間の感性に訴える画像処理理論

国立情報学研究所 情報メディア研究系 助手 佐藤いまり 氏

掲載日:2007年5月18日

佐藤いまり 氏(国立情報学研究所 情報メディア研究系 助手)

佐藤いまり 氏(国立情報学研究所 情報メディア研究系 助手)

 

佐藤は学生でさきがけに採択された稀有な研究者である。

小学生のとき「学校の勉強は学校にいるときに学べばよい」という両親の学習方針によって、絵画教室とバイオリン教室に通い芸術的才能を伸ばした。中学生のとき、一番得意だったのは美術で、実際に好きだったのは理科だった。

3人のキーパーソンに影響を受けながら、研究の世界へ入り込んだ。慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで、アドバイザリー制度の担当者であった富田勝教授の助言を受けて、コンピュータというものに興味を持ち始めた。

卒業後、金出武雄(米国カーネギーメロン大学教授)の訪問奨学生時代に、研究の楽しさを金出教授に感じ、研究者になろうと決断する。

帰国してからは、博士論文の指導教官であった池内克史(東京大学生産技術研究所教授)のもとで、研究者の基礎を築いた。

博士後期過程では、佐藤は複合現実感(実画像と仮想画像の重ねあわせ)という分野で、実世界の複雑な光源環境をどう計測するのか、そして、計測された光源下で物体の見えをどう合成するかという、2つの大きなテーマを持って研究した。

物体の陰影に基づく推定手法は、コンピュータグラフィックス(CG)の光学的整合性の実現に対して適用可能であるが、人間の主観的なものが含まれる絵画には適用できなかった。そこで、人間の表現に興味を持ち、絵画の陰影的モデルの解析において、影の部分の色相が逆転しているなどの絵画独自の画期的な規則を見つけた。

さらに、視覚情報の伝達に関連して、写実的なものと、感性的なものの両方のリアリティの追求ヘ、と幅広く研究を進めている。拡散光源を用いた物体の見えの標本化の研究で、さきがけ2年目にして「画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2005)」の優秀論文賞を受賞した。

「さきがけの研究では、人間の感性に訴えるような画像処理の理論をつくることが一番の目標です。そして、この理論が社会の役に立てばさらにいいと思います」と佐藤は研究に邁進している。

(科学技術振興機構 澤田秀光)
  • 「さきがけものがたり-未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台」(アドスリー発行、丸善 販売)から要約転載)

 

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