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キモチとキオク、そのメカニズムを探る

東京大学 医科学研究所 助教授 関野祐子 氏

掲載日:2007年3月30日

関野祐子 氏(東京大学 医科学研究所 助教授)

関野祐子 氏(東京大学 医科学研究所 助教授)

 

人間の中で最も複雑とされる部分である「脳」、東京大学医科学研究所・関野祐子はその「脳」に興味をもち、研究を進めてきた。特に、最近の神経科学研究でトピックスにもなっている「感情と記憶」に着目して研究を行っている。

現在の研究テーマは「記憶の神経回路における海馬の働き」。脳に入力された情報の取捨選択を行い、記憶を司っている「海馬」という器官の働きを研究している。

「自然科学」や「脳」・「感情と記憶」に興味を持ち始めたきっかけは、小学生の頃に遡る。よく転校していた小学生の時代、環境はコロコロ変わった。すなわち人間社会の価値観は不安定なものと感じ、それが「固定した価値観に憧れたのだ」と関野は今、語る。

だからか、恒常性がある「自然科学」というものに興味をもち始めた。中学生の時に、臨海研究所の研修に参加して、ウニの発生を目の当たりにする。「すごい神秘がここにある!」、そう思ったことが研究者を志した、原体験であった。

そして、大学3年生の時の薬理学実習で、薬物を投与されたマウスが興奮して走り回る姿を見て、「自分の行動はいったい何が決めているのだろか」という強い疑問をもった、これが脳神経の研究を選ぶ原点となったのである。

大学時代から神経科学関連の仕事をしていたので、研究歴は長い。だが、関野は「研究という競争社会で、本当の意味での『スタートライン』に着くのには、ずいぶん時間がかかりました」と言う。今は多くの学生や研究員に囲まれ、最先端の研究を行っている関野であるが、実は、博士号をとった後、安定した研究ポストに着くのに時間がかかった。さきがけ研究に採択されなければ現在の姿はないという。

11年間の下積みの期間に、「何のために研究しているのだろうか」と自問自答を繰り返した時期もあった。「かけるしかない」と応募したさきがけ研究という追い風を得た関野は、今、脳神経科学のフロンティアとして活躍している。

(科学技術振興機構 長谷川景子)
  • 「さきがけものがたり-未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台」(アドスリー発行、丸善 販売)から要約転載)

 

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