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虎の穴を越えて - 生命における少数性の問題に挑む -

北海道大学 電子科学研究所 教授 永井健治 氏

掲載日:2007年3月9日

永井健治 氏(北海道大学 電子科学研究所 教授)

永井健治 氏(北海道大学 電子科学研究所 教授)

 

ポスドク(博士研究員)から北海道大学の教授へ。若い永井健治の華麗な転身は稀有であり、この道の成功者であることは疑いない。しかし、この成功は恵まれた環境や運によって得たものではない。高校、学生時代の経験を通じて培った飽くなき探求心によって、自分の力で勝ち得たものである。

さきがけでは若手研究者としては破格の研究費(年間一千万円程度)と、研究だけに集中できる環境が提供される。しかし、永井にとって、さきがけ研究は「虎の穴」であるという。プロレス漫画の名著「タイガーマスク」では、主人公が「虎の穴」と呼ばれるレスラー養成組織において、厳しい試練に耐えながらレスラーとして成長した。

「挑戦的で魅力的な研究」と評価され採択されたものの、必ずしもすべての人にその内容が受け入れられていた訳ではなかった。そのため、永井のさきがけ研究は、計画の正当性を主張する試練から始まった。実験を始めながら、専門の生物学以外の関連分野について猛勉強を行い、様々な方法を試行錯誤することで、新しい研究の方向性を見いだした。

そして、試行錯誤の結果から多くの画期的な成果が産まれ、当初の目的を十分に達成する成果や技術を得たのである。期待を上回るような成果を勝ち取り、様々な分野の研究者からもその活躍が認められたのである。その成果の一部は、北海道大学ニコンイメージセンターの設立にもつながった。

永井は「自我作古たる研究に勤しみたい」と自己主張する。自我作古とは、『宋史』の言葉であり、「自分がなさんとすることは前人未到の新しい分野であるけれども、予想される困難や試練に耐えて開拓に当たる」という、勇気と使命感を示した言葉でもある。

まさに、既存の学問体系にはとらわれず、常にアイディアを武器にして、新しい学問を切り拓いてきた。永井を見れば、科学とは自分自身で道を拓くことができる、やりがいと魅力に満ち溢れる世界であることがはっきりと分かる。

(科学技術振興機構 沼田真也)
  • 「さきがけものがたり-未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台」(アドスリー発行、丸善 販売)から要約転載)

 

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