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みんなと同じでなくても

千葉大学 文学部 助教授 岡ノ谷一夫 氏

岡ノ谷一夫 氏(千葉大学 文学部 助教授)

岡ノ谷一夫 氏(千葉大学 文学部 助教授)

 

小さい頃、実家にはあらゆる動物がいました。チャボ、キジ、ハムスターやシマリス、ブンチョウ、そしてヤギまで。動物たちは、いっしょにいる「仲間」のような存在でした。

自然と動物が好きになり、自分でもヘビの卵を拾ってきてふ化させたり、大阪万博の開発ですみかを失ったカメを育てたりもしました。その動物たちを見て、実家は、自営業で水道屋でしたから、家業に関係のないムツゴロウの本や落語の本を読むと、怒られたものでした。

大学受験は、家業を継ぐために経済学部や経営学部を考えていましたが、浪人中に祖母が他界したのがきっかけで、父親がとつぜん「自分の好きな道に進みなさい」と言い出しました。そこで急遽、方向転換し、本当にやりたかった動物研究の道を志すことになります。慶応義塾大学の文学部なら「動物の心理学」が学べることを発見し、そこに入学することができました。

大学に入ってからは、最初の二年間はギターばかり弾いていましたね。卒業論文は大好きな「動物」と「音楽」、そして、もう一つの趣昧である「コンピュータ」を結びつけて、動物にコンピュータ音楽の識別をさせることを思いつきました。

同じ曲の短調と長調を力ナリアに聞かせ、オペラント条件付け(短調なら赤ボタン、長調なら青ボタンをくちばしで押すと餌をもらえる)で、音の識別ができるかどうかを調べるというものでした。卒業論文でしたが、当時、小鳥の条件付けに成功したのは「世界初」でしたよ。

アメリカの大学院(メリーランド大学)を受験したところ、大学の成績ではなく小鳥の条件付けに成功したことが評価され、入学を許可されました。メリーランド大学では、生物心理学を学びました。動物の脳と行動の研究です。

研究者を目指す方なら「他の人と同じでなければならない」という考えを捨てた方がよいでしょう。みんなと同じでなくても不安を抱く必要はないのです。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 岡ノ谷一夫 氏の研究について:
    ジュウシマツの歌に、人間のことばのような文法構造があることを見つけた。言語の文法構造の本質を、神経レベルで研究するには、鳥を使うことが最適との考えから、ジュウシマツが歌を学習する脳内機構や、進化のプロセスの解明に取り組んだ。その結果、ジュウシマツの歌文法が、メスの性選択によって進化した、つまりより複雑な歌を歌えるオスの方が、よりメスを引きつけることができるためであることを突き止めた。

 

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