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壁にぶつかり乗り越える経験が大切

微生物化学研究センター 特別研究員 二井將光 氏

二井將光 氏(微生物化学研究センター 特別研究員)

二井將光 氏(微生物化学研究センター 特別研究員)

 

子どもの頃は、昆虫とか植物が好きでした。東京都の出身なのですが、その頃は、今と違って自然もまだ残っていましたから、遊び回っていましたね。

近所の池で泳いでいると、ヒルが体に吸いついたりして、「これは、何だろう?」と思ったり、セミの幼虫が地中から出てくるのを見つけると、成虫になるまで一日じゅうじっとそれを観察して、「命ってなんだろう?」と考えたりもしていました。

高校の時は、授業をサボって図書館へ行ったりしてヘルマン・ヘッセなどを読み漁っていました。そして、ある日なにげなく手に取ったのが、ジョージ・ガモフ博士の宇宙や生命の起源について書いた本。それを読んで「これはおもしろいなあ」と、とにかく理系に進もうかな、と思ったんですね。

それで、大学は理科系の学部に入ったのですが、さてどの分野を専攻しようかという時に、生化学者A・I・オパーリンが書いた『生命の起源』に出会いました。

すごく難しい本で、形而上学的な考え、神が生命を創造したなんていう話はおかしいというところから始まって、最初の生命体は無酸素状態で生育した無機栄養生物である、というようなことを説いているんですね。親しくなった古生物学の教授に相談したところ「生物をやるんだったら薬学がいいのでは」と言われたこともあり、薬学部に進みました。

部活動でも、遊びでも、もちろん学問でも一生懸命やることです。何かを一生懸命やって壁にぶつかり、それを乗り越える経験が大切なのではないでしょうか。

また、幅広い教養も身につけてほしいですね。たとえば、古典的な文学、あるいは経済や政治の知識は、将来、諸君が海外の学会で発表する時には不要ですけれども、学会の後で海外の研究者といっしょに食事をして友だちになったり、飛行機で隣の席の外国人と会話を楽しんだりするには、教養が必要だと思います。

野口英世博土がアメリカ留学時に持っていった本の中には、原文のシェークスピアがあったそうです。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 二井將光 氏の研究について:
    細胞の中にある細胞小器官の内部は酸性で、胃の中もより強い酸性だ。このような酸性の環境をつくるのに「プロトンポンプ」、別名「ナノモーター」と呼ばれるタンパクが重要な働きを示していることを明らかにした。「ナノモーター」と呼ばれるのは、回転運動がこの働きに大きな役割を果たしているためで、プロトンポンプのエネルギー変換機構と回転・調節機構を解明することにより、高効率ナノモーターの実現を目指す研究も進めている。

 

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