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つまらなそうに思えることにも目配せを

京都大学大学院 助教授 矢田哲士 氏

 

今思うと、これまでの節目節目には“人”との出会いがありました。人の運に恵まれていると思います。まわりの人たちのおかげで、これまで歩んでこれたような気がします。

研究者になろうとは、あまり考えていませんでした。大学も職場も、最初に興昧を持ったり、誘ったりしてくれたところへ行っている感じです。論文博士ですし、気がついたら学位論文が書けるほどの論文がたまっていたという感じです。

この分野に足を踏み入れても、特定の先生に指導していただいたわけではありません。だから、まったく研究者としての覚悟がたたき込まれてない(笑)。

研究者という職業も、たくさんある職業の中の一つだと考えています。もちろん、研究することに喜びを感じることが一番大切ですが、適性を見極めることも大切です。といっても、それほどたいそうな適性が求められているとも思いません。

愉快な課題を見つけ出し、その課題に答えるための適切な間いをいくつか立て、それに答えるための論理的な思考を地道に積み上げ、ひたすらその課題を探究していけばよいのです。売り上げを伸ばそうとする営業や、よりよいものをつくり出そうとする職人と、なんら変わりはありません。あっ、でもきっと天才は違いますよね(笑)。

私は凡人なのでわかりませんが。どうも最近の高校生たちは、大学受験ぐらい、と言っては語弊がありますが、受験のために妙に一生懸命勉強しているようです。もっと力を抜いてはどうでしょうか。

どうしても勉強しなくてはいけない時期は一生のうちでかならず訪れます。それよりも、その時々の感性でしか不思議だとかおもしろいと思うことができない、些細で一見つまらなそうに思えることに、どんどん目配せして、つれづれなるままに思いを巡らせてほしいと思います。

何事にも考える癖をつけてほしいですね。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 矢田哲士 氏の研究について:
    ヒトゲノムの全塩基配列が決定された後、ゲノムのどこに遺伝情報が組み込まれているかを解読することが、次の研究課題になっている。すでに見つかっている遺伝子の塩基配列を集め、コンピュータを用いて共通個所を探し、さらに同じような特徴を持つ塩基配列を探す、という効率的な遺伝情報解読法を開発した。

 

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