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基礎を馬鹿にするな!基礎ほど難しいものは

九州大学大学院 教授 北川宏 氏

北川宏 氏(九州大学大学院 教授)

北川宏 氏(九州大学大学院 教授)

 

小さい頃は大阪市内に住んでいましたが、アパートのすぐそばに淀川が流れていて、近所の子たちと河川敷でバッタやザリガニを捕って遊んでいました。

とにかく虫が大好きで、ある時、親に買ってもらった昆虫図鑑にはまってしまい、おやつを食べるのも忘れて没頭していました。

小学4年生の時、アポロ11号が月面着陸しました。人類が初めて月の表面に足跡を残した瞬間でした。その時のアームストロング船長のひとことにはしびれました。「これは一人の人間には小さな一歩だが、人類にとっては大きな進歩だ」ってね。

それで、高校では天文部に入ったのですが、高校時代、それ以外の勉強はまったくといっていいほどしなかったですね。おもしろいと思えることしか勉強しなかったからです。当然のように希望する大学へは入れず、浪人生活へ突入したわけです。 そこで劇的な出会いがありました。

近畿予備校の先生に基礎を徹底的にたたき込まれたのです。京都大学で理学博士号を取って有機化学の研究者として活躍された後、高校教師になり、そして予備校講師になられた人でした。口癖は「基礎を馬鹿にするな! 基礎ほど難しいものはない」。

おかげで、35ぐらいしかなかった偏差値が80近くまで跳ね上がり、駿台予備校の全国模試で何度か一位になったものです。だんだん勉強がおもしろくなってきて、希望の京都大学理学部に合格することができました。

じつは社会人になってから、一度研究をやめようと思ったことがあります。プライベートな事情から、すべてのことに対してまったくやる気がなくなってしまって、約半年のあいだ、ほとんど何もせずぼうっとして過ごしてしまいました。

でも、もう自分だけの研究ではなくなっていたんですね。まわりの研究者の人たちから「北川君、君の仕事に期待しているから、がんばってや」なんて言われると、消えかかっていた研究への情熱が戻ってきました。あそこで研究をやめないで本当によかったと思います。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 北川宏 氏の研究について:
    クリーンなエネルギーとして期待が高い水素を、エネルギーシステムとして社会に根付かせるには、水素を吸収し、必要なときに取り出せる高性能の水素貯蔵材が不可欠。金属に比べ軽くて加工しやすい有機・無機複合ポリマーに着目、水素貯蔵物質の開発を目指している。水素を用いた燃料電池、光化学電池、水の光分解触媒への応用の可能性を探る研究も進めている。

 

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