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育児も仕事も工夫すれば

京都大学 原子炉実験所 教授 藤井紀子 氏

藤井紀子 氏(京都大学 原子炉実験所 教授)

藤井紀子 氏(京都大学 原子炉実験所 教授)

 

最初から研究者になろうなどと思っていたわけではありません。高校では化学が好きだったので、漠然と理系に進もうと思っていました。そして、大学進学を考える頃に、発酵関連の研究所で女性研究者が非常に活躍しているという新聞記事を読んだんですね。

食品化学はおもしろそうだし、バリバリと働く女性研究者のことを知り、理系に進んで、将来研究者になって手に職をつけようと思ったんです。でも「食べていきたい」 という動機から始まりますと、研究者は最も食べられない職業なんです。今にして思えば全然間違っていましたね(笑)。

博士課程を卒業した後、筑波大学の研究室に就職して、初めて地球上の生物は片手構造の分子でできており、それは化学進化の過程でもたらされたものだということを学びました。

そして、進化の過程で獲得したL型だけの片手構造が生命活動を正常に維持するうえで重要ならば、老化は進化の逆向きと考えることができるので、老化組織を調べればD‐アミノ酸が見つかるんじゃないかと考えたんです。

科学を研究するのに頭(偏差値)は関係ないですよ。今の学校での「頭がいい」は「記憶力がいい」なんですよね。でも社会に出たら、問題を発見し、それをどうやって解決するかという能力が重要になってくるわけです。

私の就職した当時は、企業が博士卒の女性研究員を採用することがなく、同じ研究歴や業績を持っていても選ばれる大半は男性でした。それだけに女性は、男性の2倍も3倍も働く気持ちでやっていってください。結婚して、子どもも産んで、でもぜひ仕事もつづけてほしいですね。

育児をしつつ仕事をする方法は、自分に合ったやり方で工夫をし、やりくりすればいいと思います。私の場合は、職場と同じパソコン環境を自宅にもつくって、職場では実験をし、帰宅後にデータの整理をするようにしていました。

困難を乗り越え、男性にはない女性独自のセンスで科学を切り開いていってください。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 藤井紀子 氏の研究について:
    タンパクを構成しているアミノ酸は、左手型のL型しかない、という常識を覆し、目の水晶体をつくっているあるタンパク中の2カ所のアスパラギン酸だけが、L型から右手型のD型に変化していることを突き止めた。この研究成果を基に白内障の予防や治療の可能性を探り、生命の起源や老化のなぞにも挑む研究を続けている。

 

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