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近所のおじいさんの塾から

三菱化学生命科学研究所 アルツハイマー病研究グループ 発症機序解明チームリーダー 星美奈子 氏

星美奈子 氏(三菱化学生命科学研究所 アルツハイマー病研究グループ 発症機序解明チームリーダー)

星美奈子 氏(三菱化学生命科学研究所 アルツハイマー病研究グループ 発症機序解明チームリーダー)

 

小学生の頃、東大理学部の生物を専攻していた町田さんという先生が、夏休みのアルバイトとして近所のお爺さんが開く私塾にやってきました。ちょうど寺子屋のような感じだったでしょうか、町田先生が私たちに話をしてくれたミドリムシワールドやワトソン・クリックのDNAに、私はある種衝撃を覚えました。この時からかもしれません、私が生物の世界へ誘われたのは。この先生が私の今の人生を決めたキーパーソンの一人であることに間違いはありません。

桜蔭高校時代、私はとにかく本を読むのが好きでした。当時もやはり、生物や医学について非常に高い関心がありました。数学も好きだったのですが、不幸にも超天才的な同級生を見て自分のセンスのなさを感じ、自分は数学に向いていないと思い込んでしまいました。それがよかったのか悪かったのかは、わかりませんが…。

さらに私が研究者の道を目指すことができた大きな要素として、親の理解の深さもありました。とくに母は若いうちに結婚をしましたが、研究者になりたいという夢があったそうで、私が研究者の道を選んだ時の一番の理解者でもありました。

今までに、研究職をつづけていくかどうかを選択するにあたって、決定的な時期が二度ありましたね。一つ目は就職のオファーがあったマスター終了後、もう一つはJST(科学技術振興機構)の「さきがけ研究21」に採択された時です。研究者の世界では、大きな予算を獲得した時が研究者の最大の危機として心がけよ、とよく言われます。確かに初めて経験することが多くあり、これが「危機」かと思いましたが、周囲の理解と援助に成果をあげることができました。

研究者に必要な資質は、「楽天家」と「執着心」。研究者には多くの実験がつきものです。実験が失敗するたびにめげていては気持ちが持ちません。自分で何かをやることが好きかどうかというのもポイントかしらね。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 星美奈子 氏の研究について:
    アルツハイマー病の発症の有力な原因物質の一つと考えられているβ-アミロイドタンパクがつくる毒性物質、アミロスフェロイドを発見、このアミロスフェロイドを手がかりにアルツハイマー発症の解明と、老化の本質に迫る研究を進めている。

 

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