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2013年9月13日編集だより

サイエンスポータル編集員 C. A.

♪ 夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれに さまよう 青空に残された 私の心は夏模様 ♪

井上陽水さんが歌う「少年時代」の冒頭の歌詞である。毎年夏の終わりになると、この歌を思い出し、このひと夏を振り返る時間(とき)を過ごす。

もう1カ月ほど前の話になるが、福島県いわき市に行く機会があった。「東北に心のビタミン・音楽を届けるプロジェクト」と題する演奏会を聴くためだ。炎天下にもかかわらず、開演1時間以上前から多くの人が、今か今かと開演を待ち望んでいる。

たまたま私の隣に座った老夫婦に声をかけられた。お二人はいまだ放射能漏れの影響が続く福島第一原発の近くにお住まいとのこと。町の半分以上の住民、特にお子さんがおられる家庭は遠方に避難し、2年半を経た今でも町は廃墟と化した状態が続いているという。
「私たちはね、心に元気をもらいたくて遠くから音楽を聴きに来たのよ」

素晴らしい音の贈り物に聴衆から惜しみない拍手が贈られる。約1時間の演奏会は大盛況のうちに幕を閉じた。

演奏会の後、町の中を散策した。津波で流されてきた瓦礫(がれき)の山や、液状化現象により浮いてしまったアスファルトのかけらが町の至るところに残っている。

演奏会が終わる時、司会者の方が話されていた言葉が印象的だった。「震災から2年以上がたち、インフラが整備され、住居もかなり確保されてきました。復旧は進んでいます。でも復興したと言えるようになるにはまだまだなのです。私たちにとっての復興とは、心から笑って過ごせるようになることだと思います」

8月15日、68回目の終戦記念日を迎えた。戦没者追悼の式典が行われ、先の原爆の日には今年亡くなられた原爆被害者の名前が新しく石碑に刻まれる。
戦後68年たった今でも苦しんでいる方々がいて、その中には被ばく二世と言われる方々も大勢いるという。

戦災も震災も変わらない。残された者が背負う復興の難しさ、大変さをあらためて痛感した夏となった。今、私にできることは何か、これからもっと真剣に考えていきたい。

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