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2011年2月23日編集だより

半年に一度開かれる産業技術総合研究所の広報委員会に出た。広報関係部門を再編したという研究所側が、広報活動の課題として最初に挙げていたのが「対話型広報活動で、知名度、認知度の向上のため、サイエンスコミュニケーションの質をどのように高めるか」だった。

続いて「マスコミ関係者との信頼関係を高める取り組みと、情報発信の仕方について」。これなら長年、相手側の立場にいたのだから、言えることは相当ある。「これこれの努力をすれば研究成果を記事にしてもらえる可能性は確実に上がる」などと。しかし、第一の課題に加え「ホームページでどのように情報発信を行うか」「出版物にさらに内容の濃い記事をどのように掲載すべきか」となると、こちらが教えてほしいくらいだ。

産総研のホームページというのは、公的研究機関の中でもトップレベルという評価を確か4、5年前に聞いた記憶がある。ところがこの世界の変化、進歩は激しい。昨年にはもう「他の機関のサイトに比べ見にくい。リニューアルせよ」という外部からの強い圧力にさらされている、と聞いて驚いた。「ホームページを一新する作業を進めているので、試作段階の画面を見て意見を聞かせてほしい」。だいぶ前、広報企画課長の依頼に応じた際にも答えたものだ。「こちらが教えてもらいたいくらいだけれど」

日ごろ、プレスリリース欄しかのぞいていなかったのだが、あらためて説明を聞くと、トップページは見違えるように変わっていた。更新頻度の高い研究成果のプレスリリース中心に画面を構成し、新たに設けた動画サイトの入口を右肩の最もよい位置に置いている。どんな研究をしているかは上部に並んだ「環境・エネルギー」「ライフサイエンス」といったバーをクリックして各研究部門のページに導く。細々とした字ばかり並ぶサイトとは異なり、だいぶすっきりしている。必要な情報も前より探しやすいトップページに生まれ変わったと言えそうだ。

「リニューアルには相応のお金かかったでしょうが、リニューアルの反響は?」。説明役の広報部総括主幹に質問してみた。「内部で作業したので特にお金はかかっていない。反応というと特に…」。後半はムニャムニャとなったが、かえって納得する。ホームページを変えたくらいでアクセス数が跳ね上がった、などという報告だったら、逆に信じられないからだ。リニューアルを外注した時には、そうしたことがあり得るかもしれない。そんなのは、担当した業者が成果を強調したいために、何らかの手を使って一時的にアクセス数を増やしただけ。ずっとそう思っている。通常のアクセス数といわれる数字自体、首をひねることがあまりに多すぎるからだ。

そもそもホームページがリニューアルされたと知ってウェブサイトを訪れる人などいるものだろうか。トップページから入ってくれるリピーターが「ホーッ。変えたんだ」と気づいてくれるくらいだろう。検索で引っかかったコンテンツを見に来てくれる人たちが、どれだけリピーターになるかの方が大事ではないか。しかし、それについてもトップページのリニューアルが急に大きな影響を及ぼすとは思えない。多分、効果を期待しても、じわじわとしか上がらないのではないだろうか。

トップページの中心コンテンツとなったプレスリリースのアクセスランキングが興味深かった。ここ1年余りのプレスリリースを、公開日から1週間のアクセス数合計で比較している。上位10件のうち半数は、当サイエンスポータルがその日(正確に言うとプレスリリース公開日翌朝)のニュースとして選び、紹介したものだ。

  • 3位:2010年8月26日「触って形を変えられる立体映像システム開発
  • 5位:2011年2月9日「暗闇でも実物に近いカラー写真撮影可能に
  • 7位:2010年10月26日「電気自動車に向いたリチウム電池負極材料開発
  • 8位:2010年7月2日「『水素ぜい化』定説見直し迫る新発見
  • 10位:2010年3月30日「脳波で500種類以上のメッセージ発信
  • 編集者と産総研のホームページビューワーのニュース感覚は似たようなものらしい。

    それよりさらに気になることがある。これらトップ10のプレスリリースには共通点があるのだ。すべて新聞4紙以上に記事が掲載されている。「記事を見た人がホームページのプレスリリースにもアクセスしてくれたと思われる」(総括主幹)ということらしい。

    テレビで知り、詳しいことは新聞で読む。昔はそう言われたものだが、今や新聞で知って、研究機関のホームページにアクセス、さらに詳しいプレスリリースを読む。そんな時代になっている、ということだろうか。

    当サイトは、発足時からニュースには末尾に必ず発表機関と当該プレスリリースを付記している。読者には親切な対応だったというべきだろう。わがサイトのニュースを見て、産総研のプレスリリースのページにアクセスした人たちも何人かはいたのではないだろうか。

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