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2010年7月14日編集だより

小岩井忠道

孫たちにばれるとまずいのだが、子どもたちのための娯楽施設「キッザニア東京」で楽しい思いをした。

エフエム放送局「J-WAVE」が、代理店など日ごろ世話になっている社外の人々へのお礼と社員の慰労を兼ねた催しとして、この夜、施設を借り切ったのだ。子どもたちにせがまれて出かけたが、消防士など人気のコーナーは待ち人数が多く、どれも体験できなかった。何年か前、そんなぼやきを娘に聞いた覚えがある。それ以外の予備知識はほとんど持たないまま、思わぬ招待にいそいそと駆けつけた。通常、大人は付き添いとして施設に入れるが、職業体験ができるのは子どもたちだけ。この日は、普段子どもたちしかできない経験を、大人が楽しめるというから、面白い。

まず「J-WAVE」のスタジオを見る。装置類は本物だ。ガラス窓で隔てた調整室とスタジオ内でディレクター、アナウンサー役が実際の放送と同じように演じる。放送と非常に近い業界で長年、働いた身だ。これらの仕事をわざわざ体験することもないので、ほかの客に譲る。

次に入ったのは有名なパン店が出展するパンづくりコーナー。クロワッサンともう一種類の形をつくった。次は病院の薬剤師。どういうわけかどの“職場“も最初に英語であいさつをさせられる。「Good evening」「Nice meet you, too」という具合だ。処方せんを見て棚から必要な薬剤を取り出し、注意書きとともに入れたケースを差し出して作業はめでたく完了。その時、指導役の若い女性がなにやら言葉を発した。続けて言え、というのだが、編集者を含め高齢ないし初老の客たちはだれもその言葉を復唱できない。何と言ったのか尋ねたら「Here you are」とのことだった。子どもたちは、こんなところでつっかえたりはしないのかもしれない。

歯科医院では、歯科師と歯科技士に分かれて患者の虫歯を削り、歯形をとる作業を体験する。次が最も人気があるという消防士だった。消防服に着替え、指揮官の号令に従い整列、番号を連呼した後、一列縦隊で大声で叫び、ベルを鳴らしながら火事現場に駆けつける。そこでまた整列、番号を唱え、放水の合図とともに建物の壁に向かって実際に放水する。火炎を模した赤い照明が急に輝いたり治まったり、となかなか臨場感がある。確かに子どもたちはもっと喜びそうだ。

本当は、それぞれの職場から報酬としてキッザニア内だけで通用するお金をもらうそうだが、この夜はその代わり、飲み物食べものがふんだんに用意されている。消防士を最後に仕事は切り上げ、後は飲食に専念した。

ものづくりの時代は終わった。これからは新しいビジネスモデルをつくり世界に打って出ない限り、日本の将来はない。最近、いろいろなところで耳にする。客である親子から入場料を取り、子どもたちに仕事をさせて、楽しませる。トム・ソーヤーにも確か似たような場面があったが、さらに仕事を提供する仕事場もスポンサー企業につくらせ、なおかつスポンサー料まで支払わせる。こんな巧みなビジネスを考えついたのは、米国人に違いない。てっきりそう思ったが、誕生地はメキシコと知って驚く。

帰宅してホームページをのぞいてみた。メキシコ以外でキッザニアが開店している国は、日本のほかに韓国、シンガポール、インドネシア、インド、ドバイ、ポルトガル、チリとなっている。なぜか米国や、ポルトガル以外の西欧の国は見当たらない。

アングロサクソン系の家族は、日曜日にキッザニアには行かない。遊びとはいえ日曜日は仕事を休んで教会に行く日だから。

まさかそんなことはないだろうが…。

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