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2010年3月19日編集だより

小岩井忠道

NGOの役割は最近活発になっているだろうが、途上国から留学生を大量に引き受けるという組織の誕生はまだのようだ。理由はいろいろ考えられるだろうが、折に触れて思うことがある。非営利組織という意味では似たような性格を持つ同窓会の活動なら、欧米諸国に引けを取らないのではないだろうか、と。

当方が属する出身高校の首都圏同窓会で、数年前、「会長以下の役員を決めるに当たっては選考過程の透明性を」というどこかで聞いたような声がわき上がった。役員選考規定なるものができあがり、選考委員会がつくられたのだが、やはりというか選考作業は暗礁に乗り上げてしまう。にっちもさっちもいかなくなり、編集者が貧乏くじを引く羽目に陥った。大学卒業時、人に指図したり、人を管理したりするのが嫌だから記者という職を選んだ人間である。以来、相当な重荷を背負ってしまうことになった。

「同窓会というのは、企業や役所で重きを置かれるような規範とは別の理屈で動く場でよいのでは。後輩は、先輩を先輩という理由だけで敬意を払い、先輩はそれぞれできる範囲で後輩の面倒を見る。これだけで十分」。会長を引き受けさせられた最初の総会であいさつした。

しかし、毎年同じことばかり言うわけにもいかない。今年2月の総会では、「自分は孤独、周囲特に親たちがかまってくれない、関心を寄せてくれない、と感じている子どもたちが日本では30%もいる。他の国は10%程度なのに」という話をした。ユネスコが2007年に15歳を対象に行った調査結果だ。これからあるいは既にこうした孤独感にさいなまされている後輩たちがどんどん出てくるかもしれないから、せいぜい先輩としても面倒を見る必要があるのでは、と言いたかったわけだ。

実は、ここでさらに言及したかったことがある。2年前に秋葉原で起きた通り魔事件についてである。7人が死亡、10人がけがを負った加害者として裁判中の被告は、東北のある県の名門県立高出身と伝えられている。そこまで言うのもどうかと思い結局、言わなかったのだが。

16日、都内で開かれた「犯罪からの子どもの安全」シンポジウム「いざというときに何が頼りか-どう身を守り、どう助けるか-http://www.ilcc.com/kodomo_sympo/ 」をのぞき、講演者でパネリストでもあった平田オリザ・大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 教授の発言に驚く。編集者が言いたかったものの、結局やめたことと同じようなことを言っていたからだ。

孤独な人間を絶望的な状態にまで追い込まないようにすることが社会の安全を考える上で非常に必要だ、と。

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