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2008年8月20日編集だより

小岩井忠道

産業技術総合研究所の広報評価委員会に出た。どのくらいの大学、研究機関が同じようなことをしているか知らないが、ここは、広報をよくしたいという意欲を相当、持っている機関と言えるのではないだろうか。 まず、広報部(部長は理事)の扱う範囲が広い。プレスリリース、公式ウェブサイトの編集・運用、機関誌・パンフフレットの出版、メールマガジン、特別展示、サイエンスカフェなどのイベント、出前・実験教室、展示・標本館の展示が、皆含まれる。広報というのが、本来、その機関の浮沈にかかわる大きな役割を担うという意識があれば当然のことだろう。

機関外の人間である広報評価委員には毎月、活動状況を示す出版物や資料が送られてくるほか、半年に1回、それぞれの活動実績を示す資料があらためてドサッと届き、それに評価表がついている。これに各委員が評価を書き込んで送った上で、委員会が招集されるから、思いつきのようなことばかり書いたり、言ったりもしていられない、というわけだ。

資料の中にはいくつかのプレスリリースに対し、マスコミの対応(一般紙、専門紙の掲載状況)と広報部としてのそれに対する自己評価が書かれたものも含まれている。研究者が強調したいことと、広報部がマスコミに売り込みたいところにずれがあることが伺えて面白い。プレスリリースをつくるまでに広報部の担当者が相応の苦労をしたことが、行間ににじみ出ている。広報部の説得になかなかウンと言ってくれない研究者の姿が、目に浮かぶ。マスコミで報じられたときどのような反響があるかは、ごく一部の研究者しか経験がないだろうから、せっかく公表するなら、より多くの人の目にとまった方がうれしい、とはなかなか考えてくれないのだろう。産総研に限らない話だと思う。

半年前の委員会で編集者が強調したのは「プレスリリースには、目を引く写真を付けることが大切で、その効果も非常に大きいはず」ということだった。この半年間で目に見える改善がなされたようには思えない。図や表については、自分の研究成果を知らせるために不可欠という意識を多くの研究者は持っていると思う。しかし、一般の人々にマスメディアを通じて知らせる場合、写真がいかに大きな効果を持つかについてまで理解している研究者はまだまだ少ない、のが現実ではないか。写真の善し悪しは、特別な場合を除いて、研究者仲間で評価し合う論文の価値にあまり関係ないだろうから。

よい写真によって新聞やテレビでより大きく報道されることが、次から研究費を確保するのにもいかに効果があるか、などとはなかなか思いが及ばないのだろうと想像する。

産総研の公式ウェブサイトは、研究機関のホームページとしてはもっともよくできているサイトだ、という評価を聞いた記憶がある。アクセス数の解析値も報告されたが、「本来ログに残っているアクセス数」は参考値としてだけ示し、その33%に相当する数字を実有効数として示しているのも、フェアな姿勢だ。どうして3分の2もの数値を除外したかというと「ロボット系アクセスや、更新確認ソフトやサービス、サーバへの攻撃系など、実ユーザーのアクセスと異なり大量かつ無差別的なアクセスであり、広報効果を判断するには集計に入れるべきでない」という判断に基づいているという。

正しいデータを何よりも尊重しなければならない研究機関としては当然の姿勢だろうが、安心した。

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