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2007年11月13日編集だより

小岩井忠道

身近な科学ニュースといえば医学ニュース、というのは昔も今も変わりないと思う。実際によく読まれるという調査結果がある。

ただし、読んだ人にどのくらいためになっているのか、となるとどうだろう。「○○病の治療法につながる成果」というタイプの記事は、昔から数限りなく読んだし、書いたこともある。しかし、「実際の治療につながる」可能性がどの程度のものか、少なくとも編集者自身は、厳密に考えた上での表現だ、とは言いにくい。このように報道されたニュースが結局、研究成果で終わってしまう。実際にそういうケースが大半ではないだろうか。

臨床分野ですぐにも患者に適用できる話がニュースになることも、時々ある。しかし、その先生の治療を受けるのは至難の業だろう。すでに大勢の患者が順番を待っているはずだから。

普通の人にとって本当に役立つ医学・健康情報を得ようとするなら、むしろニュース以外のところで探した方が現実的ということではないだろうか。新聞なら、家庭欄やくらし欄といったところに載っている医学・健康記事といった…。

朝5時台のNHKラジオ番組「ラジオあさいちばん」に「健康ライフ」というコーナーがある。今週は、内山真・日本大学医学部教授が「睡眠を知ろう」というタイトルで、毎日、睡眠に関する話をやさしく紹介している。

今朝は、「『毎日3時間しか睡眠をとらなかったため成功した』などと言う人がいるが、やめた方がよい。体をこわす」という話に笑ってしまった。毎日3、4時間しか寝られなかった、というようなことを自慢げに言ったり、書いたりしている人を、これまで何度、目にしたり、耳にしたりしたことだろう。それどころか自分自身にも思い当たることがある。40代の終わりに連日、遅くまで飲んで、睡眠時間が少ない日が続き、突発性難聴になった。これは、その後、相当なハンデとなっているし、多くの人にえらい迷惑もかけている。

その後、通信社で放送局向けにニュースや映像、音声を配信する部署に配属されたことがあり、早朝からラジオを聴く習慣がついた。「こんなニュースはもっと早く流さないと朝の放送時間に間に合わないだろう」。後輩に口うるさく注意しても、四の五の言って言うことを聞かない人間が多い。ならば、「毎早朝、NHK、民放がどのようなニュースを流しているかチェックした上で言ってるんだぞ」と分からせれば、少しは効果があるかも、と考えてのことだった。

しかし、これも相応の反作用があった。早く寝れば何の問題もないのだが、すべてのライフスタイルを急に変えられるものではない。睡眠時間が確実に減った。結局、日中の打ち合わせ、会議でしょっちゅうウトウトして、睡眠不足を穴埋めしていた、というのが実態だったのである。もっとも残る片方の耳の聴力まで失ったなどという事態になっていたら、えらいことだったが…。

内山真教授の話を聞いた後、出勤途上の電車の中で読んだ日経新聞朝刊の「私の履歴書」(田淵節也・野村証券元会長)欄に次のようなくだりがあった。

「豊田君は副社長をやってから国際証券(現在の三菱UFJ証券)の社長になったが、国際証券が初めて主幹事を獲得した会社の株式上場を祝う会で倒れ、車いすの生活になった」

田淵氏の部下として働いたころの豊田善一氏の仕事ぶりがどのようなものだったかは、13日付日経新聞を読んでいただきたい。

しかし、いまでも証券会社には、かつての豊田氏のような社員が珍しくないのだろうか。時には、内山教授がされたような話にも耳を傾けることを勧めたい。

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