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2006年10月25日編集だより

小岩井忠道

理化学研究所フロンティア研究システム20周年記念講演会を傍聴した。

最初に記念講演をした伊藤正男・第2代システム長(理化学研究所脳科学総合研究センター特別顧問、元日本学術会議会長)の最初の言葉は、「よく(当時)こういうシステムをつくったなあ、と感心する」だった。「フロンティア研究システム」(当初は「国際」がついていた)が、いかに日本の学術・科学技術にかかわる常識から外れたものだったか、この一言から推測できる。

伊藤正男氏を、システム長にする前に、まず「思考機能研究」という全く新しい研究テーマのチーム長になるよう口説いたのは、初代システム長の物理学者、久保亮五氏だった。

「いまやっている(やられている)研究を延長するのではなく、ゴールは遠いところに設定して、できてもできなくてもやる」と、言われたそうだ。

名伯楽が、名馬を見抜いて、特別の環境下で育てる-。「フロンティア研究システム」というのは、そんなものだったのだろう、と想像する。少なくとも発足当初は、そして多分今でも。

馬と言えば、中盤は5、6番手を追走、第4コーナーを回って、直線に入ってから、前を行く馬を抜き去る。こんな「好位差し」が、勝つには最も効率的と言われているようだ。

しかし、スタート直後から、先頭を切り、最後まで他馬を寄せ付けず大レースを勝ってしまう馬も、時にはいる。ダービーを勝ったカブラヤオーや、有馬記念を勝ったタニノチカラのような。例があまり古すぎて、知る人は少ないだろうが。

競走馬にたとえては失礼だとは思う。しかし、フロンティア研究システムのグループ長になるような研究者は、ゴールだけを見てひたすら先頭を走る馬のようでなければならないのでは。前を行く研究者の動向ばかりに目を向けて、最後にスッとかわす(抜く)ことを狙う、好位差しの馬のようではなく。

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