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2006年10月19日編集だより

小岩井忠道

多摩ニュータウンの広大な住宅街に隣接した、静かな環境の中に建つ恵泉女子学園大学を、編集者2人で連れ立って訪ねた。

読売新聞の消息欄で、昔から親しくさせていただいている木村利人教授が、学長に就任していると知ったためだ。

20年ほど前、当時、米ジョージタウン大学倫理学研究所の教授だった木村氏と、われわれ2人はそれぞれ知り合うことができ、バイオエシックス(生命倫理)の話を聞いて、強烈な印象を受けたものだ。

医師は患者より偉いのだから、治療の詳しい内容を患者にいちいち説明する必要などない-。少なからぬ日本の医師がそんな感覚でいたと思われるころだ。

30そこそこでタイに渡り、その後ベトナム、スイス、米国と海外で研究生活を送り、研究者としての地位を確立した木村教授の説くバイオエシックスの考え方と、日本の医療の現実、特に医師と患者の関係には恐ろしく落差があるように思えた。

研究者としての現在の活動ぶりは相変わらずで、著者・編集者として発行したばかりの「クリエイティブ・エイジング-生の充実・いのちの終わり」(ライフ・サイエンス社)を、エッセイストである恵子夫人の新刊著書「キーフさん-ある少年の戦争と平和の物語」とともに贈呈された。

さて、4月に就任したばかりの学長職としての抱負もいろいろうかがったが、その際、出たばかりの雑誌「プレジデント10.16号」を見せられた。「大学と出世」という特集を組んだ特別増大号とある。「上場役員になりやすい」、「給料偏差値」などいろいろな切り口で、「出世しやすい」大学のランキングを載せている。

フムフム、やはり理科系より文科系出身の方が、ますます偉くなりやすくなっているようだ。卒業生が多く、入学も難しい総合大学、総合大学でなければ文科系主体の大学が、上位に来るのは当たり前では。自民党だって出身派閥が小さければ、首相や3役にはなるのは難しい…。

各ランキングから受けた印象はそんなものだったが、唯一、目を引いたのが、木村学長がうれしそうに示した「全国・女子大学の損得判定」というランキングだ。卒業生の平均年収の多い順に女子大学名が並んでいる。1位の津田塾大は、歴史も古く、卒業生も多いだろうから意外性は感じられないが、2位に「恵泉女子学園」が入っているのだ。ちなみに卒業生の平均年収は740万円という。

ジョギングすれば、数分で1周りできそうな小さなキャンパスの、4年制大学になってから20年にもならない女子大学に、なぜ高収入の卒業生が多いのか?

学長職に慣れたころを見計らって、木村学長にあらためて尋ねてみることにしよう。

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