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2006年10月17日編集だより

小岩井忠道

原子力に対する日本国民の平均的な見方は? 久しぶりに考えた。広報活動をテーマにした日本原子力研究開発機構内の会合に、機構外の人間の1人として参加したからだ。

同機構の第1回報告会(6月20日)で、特別講演した立花隆氏は「原子力アレルギーというのはもともと持っていない」という自身の体験を語っている。もちろん、原子力に対する一般国民の理解を得る努力の重要さを指摘し、原子力に関わる専門家、機関にそのための努力を求めた上での話である。

立花氏の原子力に対する見方は、よく分かる。氏とは同郷(茨城県)だし、氏が都立高校に転校する前、1年間だけ在籍した高校の後輩でもあるので。この高校の正門前には、原子力の明るい未来をうたいあげる展示館が建っていた。

原子力に対する見方というのは単純ではない。にもかかわらず「賛成」か「反対」の2つに整理してしまうのは、無意味。早々と気付き、データで示した人を思い出す。

統計数理研究所所長などを務めた林知己夫氏である。

原子力発電に「賛成」か「反対」か、といった“露骨な”質問をぶつけて「日本人の原子力発電に対する見方は…」といった結論を出そうとする。林氏の調査はそんな幼稚なものではない。

「社会生活を送っている上で、一番危険だと感じるものは」と、まず質問する。

「原子力や原発」と答えた人は、1,500人中、たった15人しかいなかった。1%である。

この質問項目のしばらく後で、今度は、具体的な事故や事柄をいくつか挙げて「どれに不安を感じるか」と尋ねる。

「原発事故」に印を付けた人が、実に51%に跳ね上がる。

「それ見ろ、やっぱり一般国民の半数も危険視しているではないか」と、この結果から判断する人はいるかもしれない。

しかし、すべての質問に対する答えを総合して、林氏が出した結論は「原子力に明確に賛成する人も、逆に明確に反対する人も、それぞれ10%しかいない」というものだった。

原子力も嫌だが、仕方がないと考えている中間的意見層が大半。ただし、この層はどちらにも動く(から軽視はできない)、ということである。

この調査は、10年以上前のものだ。しかし、林氏の結論は、今でもおそらく変わらないのではないだろうか。「よくも悪くも理屈では動かない人が大半、という日本人の国民性を承知していないと、原子力に対する国民の意識を取り違える」という。

林氏の調査報告は1995年の雑誌「原子力工業」6月号に載っている。

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