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2006年10月2日編集だより

小岩井忠道

新しい会長に金澤一郎・国立精神・神経センター総長を選出した日本学術会議総会(2日)を傍聴した。女性会員の姿が目立ち、それだけでも雰囲気は十分明るい。取材する側も、当時はほとんど見当たらなかった女性記者が増えている。考えてみると20年以上、いや30年近く学術会議の総会をのぞいたことはなかった。

長年働いていた通信社に入社して2年目の1969年か70年に、日本学術会議会長、副会長主催(費用を学術会議が持つ)の懇親会に出席したことがある。江上不二男会長、吉識雅夫副会長、桑原武夫副会長という大先生方の、もし隣にでも座ってしまったらどうしよう。学術会議のこともよく知らないし、その上、先生方の業績についてもほとんど勉強していない。

決死の覚悟で、会合にのぞんだものだった。

幸い、この心配は杞憂に終わった。桑原副会長が、会合の間、ほとんど1人で話を続けてくれたおかげで、ほとんど口をきかなくても済んだからだ。

「江上会長、吉識副会長とも話し上手とはいえない。ここはひとつ自分が座を持たせないと」。そう桑原先生が考えたかどうかは分からないが、話題の豊富さ、話術のすばらしさ、そして何よりそのサービス精神に驚嘆したものだ。

会長、副会長は立派な人ばかりとはいえ、取材対象としてのランクは低い。懇親会には、新米記者でも出しておけばいいだろう。当時の新聞、通信社の学術会議に対する評価は、そんなものだった。

その日本学術会議も、黒川清・前会長時代に「社会に対し発言し、かつ、社会から発言する資格があると認識される科学者コミュニティー」を目指し、相当の変身を遂げたように見える。しかし、外部の期待は、もっと大きい。

「学術文化に関わる重要な問題は何によらずアカデミーに諮問するのが当たり前という風土を創っていくことが求められる」。学術会議の活動について評価を依頼された一人、立花隆氏のこうした注文に、「同感」という人は多いのではないだろうか。

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